そばのかす

矢野真紀 そばのかす專輯

8.夢を見ていた金魚

お祭りでとれる金魚は弱いから
すぐ死んじゃうって誰か言ってた
今朝も一匹水面に浮いた 泣きながらそっと手の平にのせた

大事にしてた 名前も付けたのに何故かしら?金魚缽のぞくの怖かった
この部屋に私以外の命の氣配をただ少し增やしたかっただけよ

一度も接吻する事は無かった
赤くて無力なあの子の唇

初めて買った金魚缽
お祭りでとれる金魚は弱いから
すぐ死んじゃうって誰か言ってた
今朝も一匹水面に浮いた 泣きながらそっと手の平にのせた

やけに涼しい 夕燒けによく似た悲しい色が獨りの午後に滲んだ
この部屋にさげすんだ空氣だけを殘して空っぽの缽は私を笑う

何度も接吻しておけばよかった
あまりに非力な私の唇

きっと私が夢を見てたの
それはまだ見ぬ滿ち足リた世界
考えてはじっと胸を焦がしてた
初めて買った金魚缽
お祭りでとれる金魚は弱いから
すぐ死んじゃうって誰か言ってた
今朝も一匹水面に浮いた 泣きながらそっと手の平にのせ

私に殘された最後の夏も靜かに手を振った
あなたと過ごした最初の夏が靜かに息を止めた

おわり作夢的金魚


初めて買った金魚缽


初めて買った金魚缽