さくら

サザンオ一ルスタ一ズ さくら專輯

11.私の世紀末カルテ

作詞:桑田佳祐
作曲:桑田佳祐

家に帰ると テレビが無くては 生きて行けません
嘘でもいいから 刺激が無くては 死んでしまいます
こんな時代に 手紙を書くのが 好きになりました
他人に己れを さらけ出すのが 怖くてなりません
闘う事や 傷つく事は拒むけど
野暮な 慰めにゃ ホロホロリ

胸いっぱい時代の風を 吸い込む頃がある
こんなに汚れた 都会の空気を 有難がっていた
いくつになっても 未熟な自分を 愛しく思ってる
そんな大人が 幼い我が子に 道を説いている
誰かにもらった 自由を疑う事はなく
知らず知らずうち ホロホロリ

可愛い女にゃ 優しく振る舞う 自分に気付いてる
気前の良さと 気さくなジョークで その場を和ませる
今夜ベッドに 連れ込む相手に 狙いを定めても
下心を悟られないかと 気にして飲んでいる
綺麗な女 愉快な男 人は皆
春と裏腹にホロホロリ

人間同士も深入りすると ロクな事はない
下手に誤解や 裏切りなんぞを 被る筋はない
人の絆は付かず離れず 希薄な方がいい
その他大勢の 群れに紛れて 幸福掴みたい
歩みの遅い者を尻目に 駆け抜けりゃ
友は泣き笑いホロホロリ

浮気をするなら バレなきゃいいわと 笑って妻は言う
このごろ帰りが 遅くなったと 気遣う振りをする
満員電車の ビショ濡れ窓から 我が家の屋根を見て
今夜のために 昨夜と違った 言い訳さがしてる
誰も知らない 居場所が欲しい それなのに
愛をブラ下げて ホロホロリ

情に流せば 弱気な態度と 傍からなじられて
腹から怒鳴ると 変わり者だと 嗚呼 避けられる
頭を下げれば その場はなんとか 凌げるが
見て見ぬ振りすりゃ 自分が何だか 惨めになってくる
他人の視線と 自分の評価に うろたえりゃ
春は柳さえユラユラリ

母さんあなたが 歌ってくれた 小唄が懐しい
この世に生まれ この世で見たのは 時代の流れだけ
未来世紀も人間の心は うつろい易いだろう
こんなアジアの 片隅なんかに しがみつきながら
もう背伸びを しようなんて言わないが
せめて泣かせてよ ホロホロリ

夢を捨てられず ホロホロリ