1.蝉しぐれ ~老いゆくいのち~
作詞:濱野裕生
作曲:濱野裕生
外は蝉しぐれ 風が途切れた早い朝
早朝野球を終えた 私を母が待つ
ほら見てご覧 母が空を指差す
遠く青く澄んだ空に浮かぶ ちぎれ雲一つ
目を落とせば 庭に白い花生姜
名前は何かと尋ね 母が歩み寄る
香り届かず 母への思い届かず
いつか母と共に植えし記憶 母にはもう昔
時に母は童になり 時に母に戻る事も
いつも同じ言葉探しながら 昔を語り出す
まるで92年の人生 紐解くように
母に届け母に響け ああ蝉しぐれ
母に届け母に響け ああ蝉しぐれ
目を移せば 遠い空に浮雲
古里離れて暮らす 母が悲しい
母は浮雲 流れゆくちぎれ雲
遠い記憶の狭間を彷徨う 老いた旅人
ああ、蝉しぐれ 母の心に歌えよ
92年の月日を愛でるように
知るや知らずや 一夏の蝉しぐれ
今日も母の心に叫べよ 命ある限り
肩を抱けばいつの間にか 母は娘になりハシャギ
そして幼い日の兄と私を 取り違えてる
まるで92年の歳月 昨日のように
兄を慕う母に届け ああ蝉しぐれ
兄を慕う母に届け ああ蝉しぐれ
時に母は童になり 時に母に戻る事も
いつも同じ言葉探しながら 昔を語り出す
まるで92年の人生 紐解くように
母に届け母に響け ああ蝉しぐれ
母に届け母に響け ああ蝉しぐれ
2.ホッホ
作詞:濱野裕生
作曲:濱野裕生
人生って老いてからの方が 辛い事が多いね‥ホッホ・母が笑う
朝から何を食べて お昼はどこに居て‥ホッホ‥それさえ分からない
それでもいいじゃないか 生きてみせるって事は 俺達に勇気をあたえる事
この4年間の 俺をよく見てみろよ 随分・我慢強くなったさ
お前にもやりたい事が あっただろうに‥ホッホ・母が聞く
こんな思いの深い息子に 育てた覚えはないよ‥ホッホ・母が笑う
そして私はもういい お前は元の暮らしに‥ホッホ・戻れと言う
私はそろそろ向こうに行って 春の七草粥でも ホッホ・作ると言う
いつも済まないねと 母が言う 言ったさきから忘れるけど‥
俺の事ならもう・いいよ 人生棄てたよ ホッホ・今度は私が・笑う
俺の事ならもう・いいよ 人生棄てたよ ホッホ・今度は私が・笑う
時々・思う事があるよ・と母が口にする お前はまるで私の母の・生き写し
お前の背中をこうして見てると 母はお前の身体を借りて
私の傍にいるようだ・と
いつも迷惑掛けるねと 母が詫びる 俺が選んだ生き方なのに‥
俺の事ならもう・いいよ 人生棄てたよ ホッホ・今度は私が・笑う
俺の事ならもう・いいよ 人生棄てたよ ホッホ・今度は私が・笑う
連れて行っておくれよ 博多の町に‥ホッホ・母が言う
みね子サンと通った あの桜坂は今でもあるかしら‥
もう一度よく見てごらん ちょっと違うんじゃない? みね子サンは隣の人
母がアルバム広げて 指さす人は 母の見知らぬ人
少し部屋が暗い気がする 目のせいかしら‥ホッホ・母が笑う
人前で弱音を吐くのが 嫌いな母は‥ホッホ‥いつも自分を隠す
私にはお前の顔が よく見えないよ ホッホ‥母が笑う
とても不安なはずなのに 気になるはずなのに ホッホ・笑って誤魔化す
いつも済まないねと 母が言う 言ったさきから忘れるけど‥
俺の事ならもう・いいよ 人生棄てたよ ホッホ・今度は私が・笑う
俺の事ならもう・いいよ 人生棄てたよ ホッホ・今度は私が・笑う
時々・思う事があるよ・と母が口にする お前はまるで私の母の・生き写し
そんな事ってあるかしら 母はお前の身体を借りて
私と暮らしているようだ・と
いつも迷惑掛けるねと 母が詫びる 俺が選んだ生き方なのに‥
俺の事ならもう・いいよ 人生棄てたよ ホッホ・今度は私が・笑う
俺の事ならもう・いいよ 人生棄てたよ ホッホ・今度は私が・笑う
ホッホ・私が笑う‥
3.兄ちゃま
作詞:濱野裕生
作曲:濱野裕生
兄ちゃま、あれはどこ? 綺麗な水がいっぱいあってさ
白い鳥が泳いでいたよね 貴方はパンくず投げたよね
八景水谷の公園の事? 水が湧き出る公園だよね
水鳥が確かに居たよね 陽射しをいっぱい浴びてね
兄ちゃま、私をもう一度 あそこに連れて行ってよ
私を母が呼ぶ 私の事を兄ちゃま、と呼ぶ‥。
兄ちゃま‥、兄ちゃま 兄ちゃま‥
兄ちゃま 母が私を そう呼ぶ‥
そして、今は夜中の午前2時 私は闇を睨みつけてる
これが俺の人生なのかと この為だけに俺が居るのかと
そして、時折、俺は狂う 得体の知れない運命を憎む
だけど命は一つ 細る命を見捨てちゃいけない、と
やがて、命は動きだす 兄ちゃま、私を起こしてよ
母がベッドで声を出す 私をトイレに連れて行って、と‥
兄ちゃま‥、兄ちゃま 兄ちゃま‥
兄ちゃま 母が私を そう呼ぶ‥
命を看るって事が これ程大きな事だと
最初は思わなかったさ 俺が愛に飢えていただけ
それが間違っていた 俺は一気に大人になったよ
母に命を返す時 今になってそれが見えてきた
もしも、このまま俺が死んでも 母は気づかない
兄ちゃま、どこに行ったの? きっと、そう‥言うはず
兄ちゃま‥、兄ちゃま 兄ちゃま‥
兄ちゃま 母が私を そう呼ぶ‥
兄ちゃま‥、兄ちゃま 兄ちゃま‥
兄ちゃま 母が私を そう呼ぶ‥
4.金木犀
作詞:濱野裕生
作曲:濱野裕生
いつになく冷えた朝 窓の外は深い秋
雪のように舞い落ちる金木犀 白い季節はすぐ‥そこ
静かな寝息立て 今朝は母がまだ眠ってる
昨日、届いたばかりのハーモニカ 枕のそばに置いたまま
窓を少し開けましょうか? 母の眠りを邪魔せぬように
そして香り放てよ金木犀 今朝は君が母を起こせ
カーテン越しに朝日が射します 窓の外は深い秋
庭の隅に積もった金木犀 白い季節はすぐ・そこ
風が部屋を訪ねます 母に季節を届けます
やがて母が静かに眼を覚す まるで幼子のように
お茶でも飲みましょうか? 耳元で母に尋ねましょう
そして香り放てよ金木犀 君が窓辺に母を・呼べ
今は秋? 母が聞く 春はまだ? 母が聞く‥
途切れ途切れの記憶の中に 忘れられない事がある
古びたアルバム 開く度に 破れた写真 継ぎ足す度に
母の記憶が つかの間・戻る
92度目の冬が来る 辛い事など一つもなかった
愉しい事だけ覚えているさ 私にいつも‥言う
母が昨夜の夢を話します 幼い頃は近所のミッチャンと
川に水汲み山には小さなビャラ集め みつえサンも同じ夢をみたかも
会いに行きましょうよ 貴方を慕うみつえサンに
そして、姉のふじえサンにも会えるかも 歌が浦は‥母のふるさと
花言葉は「気高い人」 母には似合うかしら?
香り届けよ思い伝えよ金木犀 母には「素朴さ」が似合う
日毎夜毎に匂い立ち 日毎夜毎に舞い落ちる
やがて命短かし金木犀 希望を母に与えて・くれ
厚めの布団に替えましょうか それとも薄手を重ねましょうか
部屋に飾り続けた金木犀 今日で君とは・お別れ
今は秋? 母が聞く 春はまだ? 母が聞く‥
途切れ途切れの記憶の中に 忘れられない事がある
古びたアルバム 開く度に 破れた写真 継ぎ足す度に
母の記憶が つかの間・戻る
いつになく冷えた朝 窓の外は深い秋
秋の終わりを告げて散る金木犀 白い季節はすぐ‥そこ
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