1.別れの一本杉
作詞:高野公男
作曲:船村徹
泣けた 泣けた
こらえ切れずに 泣けたっけ
あの娘(こ)と別れた 哀(かな)しさに
山の懸巣(かけす)も 啼(な)いていた
一本杉の
石の地蔵さんのヨー 村はずれ
遠い 遠い
思い出しても 遠い空
必ず東京へ 着いたなら
便りおくれと いった娘(ひと)
リンゴのような
赤いほっぺたのヨー あの涙
呼んで 呼んで
そっと月夜にゃ 呼んでみた
嫁にも行(ゆ)かずに この俺の
帰りひたすら 待っている
あの娘(こ)はいくつ
とうに二十(はたち)はヨー 過ぎたろに
2.雨降る街角
作詞:東条寿三郎
作曲:吉田矢健治
つらいだろうが 野暮な事言うでない
これきり逢えぬ 二人じゃないさ
せめて震える 肩を引き寄せ
揺れて歩けば 雨が降る
ああ 別れ街角
あれもこれも ひとときの夢ならば
今さら俺が 泣けたりするか
洩れる吐息に うるむ青い灯
なぜか今宵も 雨が降る
ああ 馴れた街角
思い出して ただ一人待っていな
忘れずきっと 迎えにゃ来るぜ
未練きれずに 濡れてたたずむ
影に嘆きの 雨が降る
ああ さらば街角
3.ギター流し
作詞:矢野亮
作曲:吉田矢健治
春が来たとて 行ったとて
旅の流しにゃ 知らぬこと
ギター泣かせて 俺も泣く
どうせはかない 恋の歌
好いちゃいけない 好けぬ身は
いっそせつない 胸のうち
閉じた瞼(まぶた)の 裏側に
せめておまえを 抱いて行こ
故郷(くに)を出たときゃ この俺も
夢も希望(のぞみ)も あったもの
街(まち)のあかりが 消えるよに
今じゃやつれた 影ひとつ
4.街の燈台
作詞:高橋掬太郎
作曲:吉田矢健治
夜の巷(ちまた)の 小ぬか雨
なぜに男の 胸濡(ぬ)らす
流れ流れの しがない生命(いのち)
せめて一夜(いちや)は 愛の灯(ひ)に
折れた翼に 風が吹く
そんな気がする はぐれ鳥
どこが心の やどり木なのか
涙ばかりが ただ熱い
よるべなければ なお淋し
街(まち)のあかりよ なぜうるむ
愛の燈台 照らしておくれ
せめて希望の わが夢を
5.男の舞台
作詞:横井弘
作曲:中野忠晴
男素顔を 化粧にかくしゃ
浮かれ舞台の 幕があく
花よ花よと もてはやされて
きょうもせつなや 舞扇
恋に生きよか 芝居に死のか
乱れ心に 夜の雨
役者稼業(かぎょう)に 哀しく生きりゃ
泣けというのか 三味(しゃみ)の音
下座(げざ)の囃子(はやし)に 舞台が変わる
舞台ばかりか 運命(さだめ)まで
浮世嵐(うきよあらし)を 忍んで耐えて
男花道 ひとり行く
6.青い月夜だ
作詞:矢野亮
作曲:吉田矢健治
波止場(はとば)離れりゃ 未練は捨てな
陸にゃ住めない 海の鳥
あすはどこかの 異国の港
待っているだろ 一夜(ひとよ)の夢が
青い月夜だ 甲板(デッキ)で語ろ
呼んでいたのか 故郷の空を
わかるおぼえが ないじゃなし
帰りたいとも 思わぬくせに
たまにゃ夢見て いまでも泣ける
青い月夜だ 甲板で語ろ
濡(ぬ)れてしょんぼり 小雨(こさめ)の浜で
送るあの娘(こ)を 俺(おれ)も見た
昔しのんで ついつまされて
やけに痛むぜ 心のきずが
青い月夜だ 甲板で語ろ
7.郭公啼く里
作詞:矢野亮
作曲:飯田三郎
山の里なら 淋しいに
ましてかっこうの 啼く日暮れ
俺ら一人を 置き去りに
行ってしまった 憎い娘よ
遠い都は あの辺り
去年祭りに 二人して
買ったショールの 後影
行かせともない この胸を
知って居たやら 知らぬやら
振ったその手も 浮き浮きと
暗い夜業(よなべ)の 燈火(あかり)さえ
揺れて吐息の 物思い春日八郎。
女ごころに あこがれた
夢がさめたら 辛かろに
泣いてくれるな すき間風
8.居酒屋
作詞:横井弘
作曲:鎌多俊与
情をかけて はずされて
ひょろりよろけた 裏通り
どうした どうした 意気地(いくじ)なし
しかりながらも やりきれず
居酒屋の
あかりへすがりに きょうも来る
昔の俺と 同じだと
酒をつがれりゃ こみあげる
泣くなよ 泣くなよ 男だぞ
涙コップに 落したら
居酒屋の
古びたビラさえ 笑うだろう
浮世(うきよ)の底に 肩よせて
生きるにおいの あたたかさ
やるんだ やるんだ 俺もやる
調子はずれの 唄(うた)だけど
居酒屋の
あかりに歌おう しみじみと
9.裏町夜曲
作詞:杉江晃
作曲:山口進
おまえがばかなら 俺もばか
ばかを承知で なぜほれた
落ちて流れた この裏町が
今じゃふたりの 仮の宿
泣かずにおくれと いいながら
いつかおいらも 泣いていた
どうせ日陰の ふたりの運命(さだめ)
風よなぶるな いまさらに
おまえが飲むなら 俺も飲む
飲んで悩みが 消えるなら
消えるものかよ この裏町の
暗いあかりが さすかぎり
10.月の嫁入り舟
作詞:横井弘
作曲:吉田矢健治
舟が行く行く 嫁入り舟が
祭り囃子(ばやし)の その中を
幼なじみが 思いをこめて
打てば太鼓も
月の流れを 泣いて行く
木(こ)の実降る降る 社(やしろ)の陰で
聞いた子もりの 唄(うた)のかず
ばちの重さを 哀(かな)しくこらえ
打てば太鼓に
浮かぶあの日の 風車
舟が行く行く 嫁入り舟が
つらい伏し目の 人乗せて
月に涙を さらしたままで
打てば太鼓は
川面(かわも)三里を 流れ行く
11.浮草の宿
作詞:服部鋭夫
作曲:江□夜詩
汽笛が聞こえる 港の酒場は
流れ流れる 浮草の宿
おまえも俺も 似たよな運命(さだめ)
ねえさんあけなよ おいらも飲むぜ
まつ毛が濡(ぬ)れてる 横顔見てたら
捨てた女が 心に浮かぶ
いまさらそれが どうなるものか
今夜はしんみり 語ろじゃないか
ふたりの身の上 流しのギターが
聞いてごらんよ 歌って行くぜ
一夜(ひとよ)さ明けりゃ さよならあばよ
マドロス暮らしは せつないものさ
涙をふきなよ 港の酒場は
夢もはかない 浮草の宿
また逢うときが いつ来るじゃやら
元気でおいでよ 達者(たっしゃ)でいなよ
12.別れの波止場
作詞:藤間哲郎
作曲:真木陽
そんなに泣きたきゃ 泣くだけお泣き
あとで笑顔に 変るなら 変るなら
俺とおまえにゃ
これが別れだ 最後の夜だ
ああ やがて霧笛の 鳴る夜だ
そんなに行きたきゃ 行こうじゃないか
いつも歩いた 波止場道 波止場道
俺とおまえにゃ
これが別れだ 愛(いと)しい道だ
ああ きょうは出船の 待つ道だ
そんなに飲みたきゃ たんまりお飲み
飲めばつらさも まぎれよう まぎれよう
俺とおまえにゃ
これが別れだ 淋しい酒だ
ああ あかの他人に なる酒だ
13.お富さん
作詞:山崎正
作曲:渡久地政信
粋(いき)な黒塀(くろべい) 見越しの松に
仇(あだ)な姿の 洗い髪
死んだ筈だよ お富さん
生きていたとは お釈迦(しゃか)さまでも
知らぬ仏の お富さん
エッサオー 源冶店(げんやだな)
過ぎた昔を 恨むじゃないが
風もしみるよ 傷の痕(あと)
久しぶりだな お富さん
今じゃ異名(よびな)も 切られの与三(よさ)よ
これで一分(いちぶ)じゃ お富さん
エッサオー すまされめえ
かけちゃいけない 他人の花に
情けかけたが 身の運命(さだめ)
愚痴はよそうぜ お富さん
せめて今夜は さしつさされつ
飲んで明かそよ お富さん
エッサオー 茶わん酒
逢(あ)えばなつかし 語るも夢さ
誰が弾(ひ)くやら 明烏(あけがらす)
ついて来る気か お富さん
命短く 渡る浮世は
雨もつらいぜ お富さん
エッサオー 地獄雨
14.あん時ゃどしゃ降り
作詞:矢野亮
作曲:佐伯としを
あん時ゃどしゃ降り 雨ン中
胸をはずませ 濡れて待ってた 街の角(かど)
アーアー 初恋っていう奴(やつ)ァ
すばらしいもんさ
遠い日のこと みんな夢
ひとりしみじみ 思い出してる 雨ン中
あん時ゃどしゃ降り 雨ン中
離れられずに 濡れて歩いた どこまでも
アーアー 別れるっていう奴ァ
たまんないもんさ
つらい運命(さだめ)を 恨んだよ
ひとりしみじみ 思い出してる 雨ン中
あん時ゃどしゃ降り 雨ン中
やけのやん八 濡れて泣いたぜ 思いきり
アーアー 思い出っていう奴ァ
ほろ苦(にが)いもんさ
今じゃあの娘も どうしてか
ひとりしみじみ 思い出してる 雨ン中
15.長崎の女(ひと)
作詞:たなかゆきを
作曲:林伊佐緒
恋の涙か 蘇鉄(そてつ)の花が
風にこぼれる 石畳
噂にすがり ただ一人
尋ねあぐんだ 港町
ああ 長崎の 長崎の女(ひと)
海を見下ろす 外人墓地で
君と別れた 霧の夜
サファイヤ色の まなざしが
燃える心に まだ残る
ああ 長崎の 長崎の女
夢をまさぐる オランダ坂に
しのび泣くよな 夜が来る
忘れることが 幸せと
遠く囁やく 鐘の音
ああ 長崎の 長崎の女
16.山の吊橋
作詞:横井弘
作曲:吉田矢健治
山の吊橋(つりばし)ァ どなたが通る
せがれなくした 鉄砲うちが
話相手の 犬つれて
熊のおやじを みやげにすると
鉄砲ひとなで して通る
ホレ ユーラユラ
山の吊橋ァ どなたが通る
遠い都へ 離れた人を
そっとしのびに 村娘
谷の瀬音が 心にしむか
涙ひとふき して通る
ホレ ユーラユラ
山の吊橋ァ どなたが通る
酒がきれたか 背中をまるめ
のんべェ炭焼き 急ぎ足
月をたよりに 枯れ葉のように
くしゃみ続けて して通る
ホレ ユーラユラ
17.海猫の啼く波止場
作詞:矢野亮
作曲:林伊佐緒
崩(くず)れた岸壁 洗う波
さびれた波止場(はとば)にゃ 海猫ばかり
おまえを知った あの夜から
俺の恋人は 海じゃなくなった
それに気づいたは
出船の汽笛が
出船の汽笛が 鳴ったあと
夕陽(ゆうひ)にしょんぼり 浮ぶブイ
人待ち顔なは 海猫ばかり
南で遭(あ)った ハリケーンも
俺の思いほど 荒れはしなかった
ひとり眠られず
甲板(デッキ)で呼んだよ
甲板で呼んだよ 恋しさに
せつない痛手(いたで)に しみる風
いっしょに泣くのは 海猫ばかり
おまえはどこへ 行ったのか
俺のともしびは 消えてしまってた
胸に書きとめた
航海日記も
航海日記も 聞かないで
18.俺と影法師
作詞:横井弘
作曲:鎌多俊与
花の故郷(ふるさと) 出たときは
エエ 出たときは
はずんでいたっけ 影法師
今じゃ巷(ちまた)の 坂道を
泣いてよろけて 口笛も
いつか忘れた 忘れたなァ
遠いあの娘(こ)を つい呼んだ
エエ つい呼んだ
許しておくれよ 影法師
泥にまみれた 胸底に
紅(べに)のたすきが しみてきて
やけに恋しい 恋しいなァ
こんな男を 見捨てずに
エエ 見捨てずに
かわいい奴(やつ)だよ 影法師
せめておまえと ふたりして
うずら啼(な)く里 故郷へ
あすは帰ろう 帰ろうなァ
19.博多流し
作詞:高橋掬太郎
作曲:江口夜詩
逢いに来たとて 逢われぬ宵は
風が身にしむ ながし唄(うた)
恋の博多の 街(まち)の灯(ひ)ふけて
渡る大橋 影淋し
むせび泣くかよ 川瀬の水も
別れつらさに 夜もすがら
中州(なかす)通れば 思い出ばかり
呼ぶな二度ない 夢ならば
男なりゃこそ 忘れるつもり
浮名(うきな)ばかりが なぜ残る
ながし疲れて 見上げる空に
月も淋しや ただひとり
20.妻恋峠
作詞:東條寿三郎
作曲:中野忠晴
もろいはずでは なかったが
今の別れにゃ つい負けた
やぼと知りつつ あとふり向けば
空(から)の荷ぐらにゃ 月ばかり
小諸出て見ろ 浅間の山に
きょうも三筋の けむり立つ
なじょな心で 行ったやら
思や顔さえ 丸写し
死んでいなけりゃ あの年ごろか
ほんに情けぬ 恋女房(こいにょうぼう)
五里も三里も 山坂越えてヨ
逢いに来たのに 帰さりょか
ほれたつもりじゃ さらにない
泣けてよろける 道八丁
み山暮らしに みやげはないが
持って行かんせ 馬子(まご)の唄(うた)
浅間山さん なぜ焼けしゃんす
すそにお十六 持ちながら
21.ごめんヨかんべんナ
作詞:伊吹とおる
作曲:吉田矢健治
待っていたのか 今日まで一人
そんなかぼそい 体で胸で
そうかい そうだろう
せつなかったろネ
ほんとにごめんヨ かんべんナ
勝手気ままな 俺らの意地が
好きとひと言 いわせなかった
そうかい そうだろう
泣きたかったろネ
ほんとにごめんヨ かんべんナ
待っておいでよ 死ぬんじゃないぜ
きっと俺らが 治してみせる
そうかい そうだろう
淋しかったろネ
ほんとにごめんヨ かんべんナ
22.旅の燈台
作詞:高橋掬太郎
作曲:吉田矢健治
どうせ波間の 渡り鳥
啼(な)き啼き行くのが 旅ならば
呼ぶな他国の 燈台あかり
男瞼が なお濡れる
海の暗さよ 夜(よ)の寒さ
マストが揺れれば 身も揺れる
裂いて捨てよか 形見の写真
それで未練が 消えるなら
そらを仰げば 流れ星
流れて消えれば また哀し
呼ぶなよふけの 燈台あかり
思い切る気で 行くものを
23.トチチリ流し
作詞:藤間哲郎
作曲:江口夜詩
何を好んで しがない稼業
浮世ぶらぶら ばちさばき
声は晴れても トチチリチン
しんは淋(さび)しい しんは淋しい
流し唄
恋の口説(くぜつ)じゃ ケッたいけれど
聞いてくんなよ おねえちゃん
ひとりもんなら トチチリチン
夢もちょっぴり 夢もちょっぴり
三の糸
男泣かせの 夜風や雨は
遠い野で吹け 山で降れ
三味(しゃみ)はここらで トチチリチン
露地の灯りに 露地の灯りに
花咲かす
24.足摺岬
作詞:高橋掬太郎
作曲:吉田矢健治
つらい別れも 男であれば
涙見せずに 行く俺だ
土佐の高知の あの娘(こ)の声が
呼んで 呼んでいるよな 足摺岬(あしずりみさき)
思い残せば 港もかすむ
揺れるマストに 風が鳴る
胸に形見の かんざし抱いて
つきぬ つきぬなごりの 足摺岬
鯨潮吹く 潮路をはるか
涙こらえて 行く俺だ
恋も情(なさけ)も また逢う日まで
捨てにゃ 捨てにゃならない 足摺岬
25.あれから十年たったかなァ
作詞:矢野亮
作曲:渡部実
暗い下宿の 四畳半
友とふたりで 手をとりあって
きっといつかは 陽(ひ)が照ると
泣いて誓った あの夜から
ああ もう十年 たったかなァ
俺の帰りを 待ちきれず
嫁に行ったと たよりを前に
あの娘(こ)恨んで 寝もやらず
飲んで明かした あの夜から
ああ もう十年 たったかなァ
過ぎてしまえば 早いもの
若い心を 燃やしたほのお
今じゃかえって なつかしく
思い出してる しみじみと
ああ もう十年 たったかなァ
26.赤いランプの終列車
作詞:大倉芳郎
作曲:江口夜詩
白い夜霧の あかりに濡れて
別れせつない プラットホーム
ベルが鳴る ベルが鳴る
さらばと告げて 手を振る君は
赤いランプの 終列車
涙かくして ほほえみ合(お)うて
窓に残した 心の温(ぬく)み
あの人は あの人は
何日(いつ)また逢える 旅路の人か
赤いランプの 終列車
遠い汽笛に うすれる影に
一人佇(たたず)む プラットホーム
さようなら さようなら
瞼の奥に 哀しく消える
赤いランプの 終列車
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