北島三郎全曲集~山・母・竹~

北島三郎 北島三郎全曲集~山・母・竹~歌詞
1.母

作詞:仁井谷俊也
作曲:原譲二

母さん おふくろ 母ちゃんと
呼び名はいろいろ あるけれど
俺の母親 ただひとり
幼いあの日は 膝の中
聞いて育った 子守唄
あなたがいたから 俺がいる

母さん おふくろ 母ちゃんは
苦労のくの字も 云わないで
わざと自分は 後まわし
おやじが叱った あの夜の
母のやさしい 手のひらが
想い出ぬくもり 懐かしい

母さん おふくろ 母ちゃんの
あの声 あの癖 あの笑顔
いつも出てくる 夢ん中
遠くで見守り はげまして
強く生きろと 教えてる
心じゃいつでも ありがとう


2.銀座の庄助さん

作詞:三宅立美
作曲:いづみゆたか

銀座柳が なびこが散ろが
それはうき世の 風次第
おれは銀座の 庄助さん 庄助さん
親の意見にゃ なびかぬけれど
酒ときいたら わきめもふらず
飲んでこの世を ヨー ホイホイ
はしご酒

女房もらえと もちかけられて
コップもちゃげて 高笑い
さても気ままな 庄助さん 庄助さん
おれの彼女は お酒と決めた
かわい徳利よ ちょいとこっちゃおいで
えんりょするなよ ヨー ホイホイ
みずくさい

酔って見上げりゃ お月さんが二つ
のんべチョンガーの わびしさよ
おれは泣き虫 庄助さん 庄助さん
明日はやめよう のまずに貯めて
女房もらおうか 話のわかる
それもそうだが ヨー ホイホイ
もう一ぱい


3.還暦

作詞:木津夢人
作曲:木津夢人

若き時代を 今ふりかえり
歩き続けた この道は
山谷ありの いばら道
お前と供に 分ちあい
生きて節目の
あぁ人生 今ここに還暦を

歳の流れも 浮世の義理も
波間に消えて 浮きしずむ
真心結ぶ きずな糸
この先供に 夫婦道
我慢しんぼう
あぁ人生 今ここに還暦を

両手(ふたつ)重ねて 我慢の坂を
いくどとまった こともある
人生苦労 まだなかば
再び供に たしかめて
いくえちぎりの
あぁ人生 今ここに還暦を


4.北の漁場

作詞:新條カオル
作曲:桜田誠一

いのち温めて 酔いながら
酒をまわし飲む
明日の稼ぎを 夢に見て
腹に晒し巻く
海の男にゃヨ 凍る波しぶき
北の漁場はヨ 男の仕事場サ

沖は魔物だ 吠えながら
牙をむいてくる
風にさらした 右腕の
傷は守り札
海の男にゃヨ 雪が巻いて飛ぶ
北の漁場はヨ 男の遊び場サ

銭のおもさを 数えても
帰るあてはない
二百浬を ぎりぎりに
網をかけてゆく
海の男にゃヨ 怒 が華になる
北の漁場はヨ 男の死に場所サ


5.竹

作詞:野村耕三
作曲:原譲二

雪の降る日も 雨の日も
竹は節目で 伸びてゆく
人もまた 己れが道の一里塚
確かめながら 行けばいい
そこに出逢いも 彩りも
ああ…粛々と 行けばいい

月の世界に 憧れて
竹に託した 夢もある
人はみな 見果てぬ夢の夢灯り
しっかと抱いて 生きりゃいい
熱い想いを 温もりを
ああ…粛々 と行けばいい

花の咲くのは ただ一度
竹は寿命(いのち)が 尽きるとき
人もまた 上辺の花を飾るより
誠実(まこと)の花を 持てばいい
こころ豊かに しなやかに
ああ…粛々 と行けばいい


6.夫婦一生

作詞:仁井谷俊也
作曲:原譲二

初めて出逢って 結ばれて
気がつきゃ苦労の 九十九(つづら)坂
時には妻に 時には母に
おまえいりゃこそ 今日がある
夫婦(ふうふ)一生
よろしく頼むよ これからも

着たきり雀の あの頃は
裏町こぼれ灯(び) 夢見酒
明日(あした)が見えぬ 暮らしの中で
陰でささえて くれた奴
夫婦一生
こころで言うのさ ありがとう

この次この世に 生まれても
やっぱりおまえが 恋女房
しんどい時は いたわりあって
俺が今度は 尽くすから
夫婦一生
ふたりは道づれ どこまでも


7.男飛車

作詞:関沢新一
作曲:安藤実親

何かあったら すぐ飛んでくぜ
それが自慢の 男飛車
俺がやらなきゃ 誰がやる 誰がやる
時代おくれと 笑われようが
道理を外さぬ 男でいたい

あとの祭りじゃ 洒落にもならぬ
目から火を吹く 王手飛車
せくな嘆くな 男なら 男なら
あの手この手に 奥の手胸に
悔いを残さぬ 男でいたい

俺が動けば 世間が変わる
行くぜ縦横 十字飛車
どうせ勝負は 時の運 時の運
そうと決れば 一気に夢を
かけて花咲く 男でいたい


8.北の大地

作詞:星野哲郎
作曲:船村徹

はるかなる 北の空
木霊も叫ぶ エゾ松林
母の大地に根を下ろし
雪を吸い みぞれを背負い
この人生を アア… ハ…噛みしめる

鈴蘭よ ハマナスよ
出逢いの時を 信じて耐えた
愛がそのまゝ 花となる
その姿 その凛々しさが
縛られた春の アア…ハ… 扉を開ける

ギラギラと 燃えながら
夕陽はうたう 大地の歌を
汗と涙を 分けあった
幾歳の 希望の道に
おまえとおれの アア…ハ… 星が降る


9.浪曲太鼓

作詞:原譲二・哲郎
作曲:原譲二

なにがなにして なんとやら
唄の文句じゃ ないけれど
男一匹 この身体
何処で咲こうと 散ろうとも
なんのこの世に 未練はないが
故郷(くに)に残した お袋にゃ
苦労 苦労のかけ通し“おっ母さーん”
馬鹿なせがれが 詫びている

なにがなにして なんとやら
いろはかるたじゃ ないけれど
二度と戻らぬ 人生を
我身一人の為にだけ
歩く男に なりたくないさ
影を叱って 越えてゆく
無情 無情の泪坂“おっ母さーん”
負けはしないさ 俺はやる

なにがなにして なんとやら
浪花節では ないけれど
一度決めたら やり通す
たとえ世間が 変われども
涙なんかは だらしがないぜ
弱音はいてちゃ 生きられぬ
我慢 我慢さ夢じゃない“おっ母さーん”
今に花咲く 春が来る


10.ギター仁義

作詞:嵯峨哲平
作曲:遠藤実

雨の裏町 とぼとぼと
俺は流しの ギター弾き
“おひけえなすって
手前ギター一つの
渡り鳥にござんす”
峠七坂 手を振って
花の都へ 来てから五年
とんと うきめの 出ぬ俺さ

風の冷たさ 身に沁みる
俺は落葉か ギター弾き
“おひけえなすって
手前おけさおけさの
雪の越後にござんす”
故郷想えば 初恋の
死んだあの娘も 生きてりゃ廿才
俺もあん時ゃ うぶだった

情け横丁 今晩は
俺は流しの ギター弾き
“おひけえなすって
手前宿なし雀の
流れ者にござんす”
暗い酒場の 片隅で
そっと笑った 空似の人の
何故か気になる 泣き黒子


11.やん衆挽歌

作詞:新條カオル
作曲:原譲二

海の碧さに 惚れ込みながら
さびれ番屋で 風を待つ
吼える山背の うねりも消えて
沖は朝焼け ゴメが舞う
酒も男の 清め酒
北の船唄 やん衆挽歌

口紅も引かずに 働く女房
もんぺ姿で 網を刺す
腕の古傷を こらえて耐えて
せめていい夢 見せたいものと
右へ左へ 舵をとる
北の船唄 やん衆挽歌

潮で揉まれた しわがれ顔が
海の男に よく似合う
みぞれ混じりか 雲足はやい
地獄廻りの 船が出る
ぐいと飲み干す 命酒
北の船唄 やん衆挽歌


12.漁歌

作詞:山田孝雄
作曲:浜圭介

俺が網を引くのはよ
可愛い女房と子供によ
腹一杯 飯を食わすためなんだよ
坊の岬に桃花咲く頃
今年も鰹が 鰹が来るぞ
はまらんかい きばらんかい
東支那海は 男の海よ

俺が海で死んだらよ
可愛い女房と子供はよ
どうして生きる 嵐にゃ負けるものかよ
夫婦鶯 裏山で鳴く頃
今年も鰹が 鰹が来るぞ
はまらんかい きばらんかい
沖は荒海 男の海よ

はまらんかい きばらんかい
東支那海は 男の海よ


13.博多の女

作詞:星野哲郎
作曲:島津伸男

ひとの妻とも 知らないで
おれはきたんだ 博多の町へ
逢わなきゃよかった 逢わないで
夢にでてくる 初恋の
君をしっかり だいていたかった

夜の那珂川(なかがわ) 肩よせて
ゆけばしくしく 泣くさざ波よ
ゆるして下さい ゆるしてと
わびる姿が いじらしく
おれはなんにも 言えなかったのさ

それじゃゆくぜと 背を向けて
夜の中洲(なかす)へ 逃げてはみたが
まぶたをあわせりゃ 浮かぶのさ
俺はやっぱり あの頃の
君をさがして 明日に生きるのさ


14.年輪

作詞:関根縋一・石本美由起
作曲:原譲二

雪の重さを はねのけながら
背のびしたかろ枝も葉も
山に若葉の春がくりゃ
よくぞ耐えたと笑う風
苦労 年輪 樹は育つ

みどり絶やさぬお山の掟
守りつづけて子や孫に
強く伸びろと親ごころ
枝を切る木に血が通う
苦労 年輪 樹は育つ

いつか世に出て大黒柱
夢のようだか夢じゃない
願い重ねた歳月に
熱い想いが生きている
苦労 年輪 樹は育つ


15.風雪ながれ旅

作詞:星野哲郎
作曲:船村徹

破れ単衣に 三味線だけば
よされよされと 雪が降る
泣きの十六 短かい指に
息を吹きかけ 越えてきた
アイヤー アイヤー
津軽 八戸 大湊

三味 が折れたら 両手を叩け
バチが無ければ 櫛でひけ
音の出るもの 何でも好きで
かもめ啼く声 ききながら
アイヤー アイヤー
小樽 函館 苫小牧

鍋のコゲ飯 袂で隠し
抜けてきたのが 親の目を
通い妻だと 笑った女の
髪の匂いも なつかしい
アイヤー アイヤー
留萌 滝川 稚内


16.山

作詞:星野哲郎
作曲:原譲二

流れる雲の 移り気よりも
動かぬ山の 雪化粧
ガンコ印の 野良着をまとい
生きる師匠(おやじ)の横顔に
おれは男の山をみた
おれもなりたい 山をみた

けわしい山に 登ってみたい
自分の道を 極めたい
それは男の 見果てぬ夢か
山に登れば その山の
山の向こうに 待っている
山の深さを 知るばかり

目先のことに うろちょろするな
昨日と同じ 今日はない
それが師匠(おやじ)の 口癖だった
たった一度の 人生を
花にするのも がまんなら
山にするのも またがまん