0.6

amazarashi 0.6歌詞
1.光、再考

作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ

もし生まれ変わったらなんて言いたくない どうしようもない
僕の人生も長い付き合いの内 愛しくなってくるもんで
ぶつかって 転がって 汗握って 必死こいて
手にしたものは この愛着だけかもな まぁいいか
そんな光

時々虚しくなって全部消えてしまえばいいと思うんだ
神様なんてとうの昔に阿佐ヶ谷のボロアパートで首吊った
綺麗な星座の下で 彼女とキスをして
消えたのは 思い出と自殺願望
そんな光

朝が来るたび陰鬱とした気持ちでそれでも青い空が好きなんだ
公園ではしゃぐ子供達と新聞紙被って寝てる家の無い人
未来は明るいよ 明るいよ
くしゃみを一つしたら 大勢の鳩が 大空へ飛び立った

どこへ行けばいいんですか 行きたいとこへ勝手に行けよ
何をすればいいんですか 僕は誰に尋ねてるんだろう
何か始めようと震えてる ジャングルジムの影が長くなって
僕は今から出かけるよ ここじゃないどこか
そんな光

彼女が歓楽街でバイトをはじめて夜は一人になった
特に寂しくは無いけど急にテレビ番組が好きになった
朝彼女が戻って 僕が部屋を出て行く
無垢に笑う彼女が本当に綺麗だと思った
そんな光

子供の頃の影踏み遊びを思い出してる 追いかけても
決して掴めない物 まるで蜃気楼 だけど僕は気付いてる
本当は手にしたくなんか無いんだよ ずっと追いかけていたいんだよ
もっと胸を焦がしてよ 死ぬまで走り続けたいんだよ

流れ流れて明日は東へ 出会いと別れを繰り返して
光と陰を股にかけて 泣き笑いを行ったりきたり
そうだよ 大丈夫 大丈夫 皆同じだよ
上手くいかない時は誰にでもあるよ
そんな光

日が沈みまた昇るように 花が散りまた咲くみたいに
全てはめぐりめぐって 全てがほら元通り
もし生まれ変わったらなんて 二度と言わないで
今君は日陰の中にいるだけ ただそれだけ


2.つじつま合わせに生まれた僕等

作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ

遠い国の山のふもと この世で一番綺麗な水が湧いた
やがてそれは川になり そこに群れを作った魚を
腹を空かした熊が食べて 猟師が熊の皮をはいで
それを市場で売りさばいて 娘の為に買った髪飾り
悪い人間がやってきて 全部奪ってしまったのは
歴史のちょうど真ん中辺り 神様も赤ん坊の時代
母親のこぼした涙が 焼けた匂いの土に染みて
それを太陽が焦がして 蒸発して出来た黒い雨雲

その雲は海を越えた砂漠に 5ヶ月ぶりの雨を降らせた
雨水を飲んで生き延びた詩人が 祖国に帰って歌った詩
それを口ずさんだ子供達が 前線に駆り出される頃
頭を吹き飛ばされた少女が 誰にも知られず土に還る

そこに育った大きな木が 切り倒されて街が出来て
黒い煙が空に昇る頃 汚れた顔で僕等生まれた
善意で殺される人 悪意で飯にありつける人
傍観して救われた命 つじつま合わせに生まれた僕等

高層ビルに磔の 価値観は血の涙を流す
消費が美徳の人間が こぞって石を投げつけるから
金にもならない絵をかいた 絵描きは筆をへし折られて
見栄っ張りで満員の電車が 走る高架下で暮らしている
喜怒哀楽をカテゴライズ 人に合わせて歌が出来て
悲しい時はこの歌を 寂しい奴はあの歌を
騙されねーと疑い出して 全部が怪しく見えてきて
人を信じられなくなったら 立派な病気にカテゴライズ

不健康な心が飢えて 悲劇をもっと と叫んでいる
大義名分が出来た他人が やましさも無く断罪する
人殺しと誰かの不倫と 宗教と流行の店と
いじめと夜9時のドラマと 戦争とヒットチャートと

誰もが転がる石なのに 皆が特別だと思うから
選ばれなかった少年は ナイフを握り締めて立ってた
匿名を決め込む駅前の 雑踏が真っ赤に染まったのは
夕焼け空が綺麗だから つじつま合わせに生まれた僕等

ふざけた歴史のどん詰まりで 僕等未だにもがいている
結局何も解らずに 許すとか 許されないとか
死刑になった犯罪者も 聖者の振りした悪人も
罪深い君も僕も いつか土に還った時

その上に花が咲くなら それだけで報われる世界
そこで人が愛し合うなら それだけで価値のある世界
だからせめて人を愛して 一生かけて愛してよ
このろくでもない世界で つじつま合わせに生まれた僕等


3.ムカデ

作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ

給水塔に反射する夏の太陽 器用に生きる象徴としての
彼女の笑顔 汗ばんだ静動脈に巣食う褐色の火薬じみた病理
僕が僕ではない感覚 もしくは錯覚 六十億の溜息に巻き起こる黄砂
逃げ場なく息も絶え絶えな ムカデ
涙 の濁流を這って 何処へ 行こう 何処も 駄目だ
居場所 が無い 神様僕は分かってしまった
空っぽの夜空が綺麗 あの黒い空白に埋もれてしまえたらって
願う そうか もしかしたら 僕は 死にたいのかな

愛は愛の振りして 全部飲み下せと刃物覗かせる
今日は今日の振りして 全部やり直しだと僕を脅かす
こっから踏み出すなよ 絶対だぞ 誰だ後ろから押す奴は ほら後一歩だ
そうだ 夢がぶら下がる最果ての絞首台

西日に染まる郊外の公団住宅 心臓を針でつつかれる様な感傷
及び 生きてる事に対しての罪悪感
付きまとう闇 立ちはだかる闇 赤面症の季節における リビドーの肥大
故の 現実からの逃避 妄想 妄想 妄想
遮断機に置き去りの自意識 真っ二つに割れる数秒前
赤が光る 消える 光る 消える 光る 消える 消えろ
チャイナドレスの女 田園都市線 劣等 劣等 過去 過去
全部消えろ 神様 殺してやる

過去は過去の振りして 全部受け入れろと喉に絞めかかる
夜は夜の振りして 全部おまえのせいだとがなりたてる
こっから逃げ出すなよ 絶対だぞ 誰だ後ろから押す奴は ほら後一歩だ
そうだ 夢がぶら下がる最果ての絞首台

僕は触れていたかった まだ繋がっていたいよ
ビルの屋上に立った 今更思い出すんだ
春の木漏れ日に泣いた 母の声が聞こえんだ
此処にいてもいいですか 此処にいてもいいですか

空は空の振りして 全部知ってるぞって僕を見下す
人は人の振りして 全部吐き出せと僕を睨み付ける
こっから踏み出すなよ 絶対だぞ 誰だ後ろから押す奴は ほら後一歩だ
そうだ 夢がぶら下がる最果ての絞首台

僕は触れていたかった まだ繋がっていたいよ
ビルの屋上に立った 今更思い出すんだ
春の木漏れ日に泣いた 母の声が聞こえんだ
此処にいてもいいですか 生きていてもいいですか


4.よだかの星


5.少年少女

作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ

校庭の隅っこで 体育座りしてぼんやりと見てる
野球部のフライを眺めるように なんとなく未来を見てる
いつかは変わってしまうかな 大好きなあの子の笑顔とか
馬鹿だったあいつらも 大人になってしまうかな
今まさにヒットを放った 4番バッターのあいつは
一年後の冬に 飲酒運転で事故って死んだ
その時 誰もがあまりの空っぽに立ち尽くしていた
母さんが汚れたバットを抱きながら泣き叫んでいた

僕が憧れた彼女は 男に逃げられたストレスで
過食気味になったと笑った こけた頬を引きつらせ
右手には悪趣味な指輪と かさぶたの吐きだこ
諦めるのは簡単と コーヒーをすすった

夜の街を彷徨いながら 昔話に夢中になってた
そんな事もあったねと 彼女は笑いながら泣いた
それでも それでも 頑張れなんて言えなかった
さよなら さよなら せめて笑いながら手を振った

少しずつ 諦める事ばっかり上手になってた
我慢する事が 人のためになると思ってた
記憶の隅に積み重ねた 無謀な夢と悔し涙
押し殺したホントの気持ちが むなぐらに掴みかかる
「どうしてここに居るんだよ 今すぐに逃げ出せよ
望んだ様に生きられないなら 死んでんのと同じだ」
そうだ 僕も君ももう一度新しく生まれ変われるよ
傷ついて笑うのは 金輪際もうやめにしよう

凍える夜に一人だから 僕等は間違った事もやった
心無い人が多すぎて 僕らは無駄に強くなった
それでも それでも 間違いじゃないと信じたいな
さよなら さよなら 強がりは夜の闇に溶けた

校庭の隅っこで 体育座りしてぼんやりと見てる
野球部のフライを眺めるように なんとなく未来を見てる
僕は変わってしまったかな 時々不安で恐くなるよ
ホームインした四番バッターがはしゃいで笑う声

それぞれの不安を抱えて それぞれ未来へ歩んでいった
それぞれが痛みを抱いて それぞれ今日に立ち尽くした
なんだろう なんだろう 涙が溢れてしょうがないよ
さよなら さよなら 思い出なんて消えてしまえ
どうせ明日が続くなら 思い出なんていらないよ
この足を重くするだけの感傷なら どぶ川に蹴り捨てた
それでも それでも 涙が枯れる事はないから
さよなら さよなら せめて僕は笑いながら泣いた


6.初雪

作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ

青森駅前に雪が降る 果たせなかったいつかの約束が
バス停に留まる少女が吐いた 白い息と一緒に夜空に消えた
積もりだしたのは彼女の記憶と 感傷とわずかな後悔
長く伸びる僕の足跡も やがてそれに消されるだろう

思えば遠くへ来たもんだ いや と言うより振り出しに戻ったのか
自嘲気味に踏み出すその一歩は 今日も変わらず迷ってばかり
それでもここに留まるよりは いくらかましだと信じてる
肩に積もった雪をみて思う 少し休みすぎたみたいだな

いかないでくれと 呼び止める 思い出を
振りほどいて僕は どこまでいけるのだろ

初雪が 風に吹かれて 僕らの街 通り過ぎただけ
君の優しさ 風に吹かれて 僕の胸 通り過ぎただけ

雪は昨日から止むことを知らず 出かけようとドアを開けた手を止める
綺麗だなと思うより早く 面倒くさいななんて一人ごちる
傘はないし 時間も無い ましてや期待なんてあるはずも無く
ただ向かうべき目的地と 焦燥だけは捨てるほどある

そんな毎日を生きてます 僕はなんとかやってます
これを幸福とは思いませんが かといって不幸とも思いません
ただ 君がいなくなったことで 出来た空白を埋められずに
白黒に見えるの街の景色 決して雪のせいではないのでしょう

悲しいことなんて あるものか あるものか
振りほどいて僕は 急いで出かけなくちゃ

初雪が 風に吹かれて 僕らの街 通り過ぎただけ
君の優しさ 風に吹かれて 僕の胸 通り過ぎただけ

雪は今日も止むことを知らず 急ぐ僕の足はもつれる
笑い合った長い月日も 確かに分かり合えた何かも
全部嘘だと言い切れたら 僕は簡単に歩けるのに
でも大丈夫 ちゃんと 前に進めているよ

初雪が 風に吹かれて 僕らの街 通り過ぎただけ
僕はそれに 少し泣いただけ 冬の風に 心揺れただけ