残響レギオン

少女病 残響レギオン歌詞
1.深紅のエヴェイユ

作詞:少女病
作曲:ピクセルビー

「希望と絶望を司る二つの光彩。
この世界では決して等量に降り注ぐことのない光の雨。
寂寞の音は波紋に。
そして空を覆う赤き月の残光は、いつしか残響となって……」

「それは、幾多の嘆きの中紡がれる、第二の魔女の物語」

悲鳴の中降り注いだ 深紅の雨に浮かぶ 第二の魔女の影(silhouette)
日々に飽いた魔女 嗜みしは残忍な狂気(folie)
神託は堕つ 不遜 不変 不滅の混沌(chaos)に飲みこまれ
ただ冷えた死だけが 支配せし煉獄(purgatoire)

ah... 退屈だわ 血塗られた指を舐め
彼女は薄く哂う 動かぬ玩具踏み潰して

今 秩序のなき 澱んだ古城で
反逆の狼煙を上げるような無謀な者はいない
魔女に跪いて神を呪って
人々が謡うは称賛の嘆き(chagrin)

扇動して巻き起こした 戦争を眺め
優雅に食事を楽しむのもすぐに飽きて
愛玩動物(pet)の蛇と少女だけを 暗く狭い蔵に入れて
閉じ込める遊びも 食傷してしまった

ah... どれもこれも愉快なのは最初だけ
彼女は苛立ちを 隠しもせず刃を薙ぐ

さあ 刹那の夜 ここで生まれる
仮初の生命を 忌まわしい物語に残そう
魔女はまた新たな 遊戯に耽り
結末を想って快楽にふるえて 笑った――――

「描けた。不快で愉快な、終わりまでの軌跡...」

穢れた狂信者(fanatique)の 祈りを受けただ厳かに
赦されざる魔法で 紅き光に包まれゆく――――

「ふふっ。ねぇ、目をそらさないで。
――――物語がはじまるよ」

今 秩序のなき 澱んだ古城で
反逆の狼煙を上げるような無謀な者はいない
魔女に跪いて神を呪って
人々が謡うは称賛の嘆き(chagrin)

さあ 刹那の夜に、ここで生まれた
仮初の生命を呪わしい物語に宿そう
血の黙示録に刻む 終焉の覚醒(eveil)
幻想は静かにはじまりを告げた...

「望まぬままに開け放たれた棺」

「それは、消費されゆく凶夢の断章。踏み躙られた絆の物語」

「知らないなら教えてあげる。本当の終わりの歌を――――」


2.十三月の不確定なドール

作詞:少女病
作曲:ピクセルビー

華美で豪奢な塔(tour) 荘厳な支配(domination)
囲われるは美しい少年達
散見される不幸な少女も 男装強いられ

暴虐の魔女が夜な夜な繰り広げるのは
永久に解放されない悪夢(cauchemar)

踊りましょう? 絶望の声を従えて
歌いましょう? 消えゆく心音に乗せて

(無様に踊れ 死ぬまで
滑稽に謡え 沈め)

滅びましょう? 己の全てを失って
受け入れれば飽きるまで可愛がってあげる――――

(我に弓ひけ 求めよ 真の自由を...)

「美しくないものはみんな死んだらいいのに……。
美しいものはいつか私の手で壊してあげよう、ね?」

心を手折られて 人が屈服する様
それがとても“美しい”と嘲笑った
どんなに凛と咲き誇る花も いつかは枯れゆく

彼らが大切に想う家族や恋人
邪魔で不要な命を奪った

絆狩りの忌み名を掲げる負の儀式(rituel)
その洗礼を浴びて集いし兄弟達(freres)

(さあ思い出せ その身に
託されたah... 遺志を)

首輪をつけ 心項垂れたコレクション
決して消えぬ 痛ましい烙印を背負って――――

(先に潰えた仲間の 声に応えよ)

「髪まで切られて、名前を名乗る自由さえ奪われて。
私がどこにもいなくなるみたい...」

「ここで屈服したらヤツの思惑通りになるんだ。
みんなで耐えて、生きよう。そうすればいつか……」

「生きたって、私達に帰る場所なんてないじゃない!」

ah...次々と落命する仲間達(freres)
懸命に支えあった 悲劇の人形(doll)

踊りましょう? 絶望の声を従えて
歌いましょう? 消えゆく心音に乗せて
摘み取りましょう? 幽かに残る澄んだ芽を
血に染まった渇望を今奏でて...

可愛いよ 凛々しいよ だから穢してあげる
苦しいの? 悲しいの? ならば壊してあげよう
ねぇ、生まれてきたことを後悔しているの?
簡単には終わらせない 可愛がってあげる――――

(はじめよう 真の悲劇を...)

「不死なる永劫の日々に飽いてしまった暴虐の魔女、アイリーン。
彼女が今最も夢中になっている遊戯。
それは、見目麗しい少年達を囲い、身も心も屈服させること。
人の悲しむ顔が一番美しいと感じる彼女は、彼らにとっての大切な者達を
殺してから少年達をコレクションに加えていて……」

「簡単には折れない。これが宿命だなんて認めはしない。だから……」


3.偽物の夜に誓え反逆者

作詞:少女病
作曲:RD-Sounds

万雷の死が暗澹と 降り注ぐ不夜城を
背にして二人は 走る――――

「魔女に囲われていた一人の少年と一人の少女は、
監視の目を縫うようにして脱出に成功する。
共に囚われている者達を見捨てるような形で。
けれど、いつか必ず助けられる機が訪れると信じて……」

「振り返るな、足を前に運べ!」

「わ、わかってるっ」

気付いた時には 形振り構わず不意に駆け出していた
折れていると思った心をまた 奮いたたせてくれた
一人じゃない...互いの存在

二人が逃げれば 残された者の処遇にどんな酷い
影響を及ぼしてしまうだろう?
想像をすることさえも怖く
必死に思考押し殺した――――

月明かり その色彩は偽者の夜だけを染め上げて
諦観めいた囀りを 最果てに照らしだす 無垢なる残骸を憂い...

幾夜を徹して 街へ戻っても帰る場所なんてなく
家族はもうどこにもいないのだと わかりきった事実を
突きつけられ...言葉を失う

旧知の誰かに 見つかることさえ許されないと知った
魔女の元へ連れ戻されてしまう
ゆっくりと眠ることさえできず...
自由は虚空に掻き消え――――

ah...遠く離れた
異国にまで逃げる路銀もない二人
この地から離れたとして 安寧の瞬間など訪れない

身体に焼きつけられた 永遠に足枷となる消えない烙印
その烙印を見咎められれば すぐに魔女に引き渡されるだろう

立ち上がれ 未だ囚われ救いを待ち続ける友のため
その意思だけは失くさない
この傷に誓うんだ 夜天を睨んで
月明かり その色彩は偽物の夜だけを染め上げて
諦観めいた囀りを 最果てに照らしだす 無垢なる残骸を憂い...

「ね、顔色が悪いよ?」

「キミこそ真っ青だ。けど、いつまでも怖がってばかりもいられない」

「もう、わかってるっての!」

「仲間を助けると誓った確かな決意。
これを一夜限りの自由になんてしないと、二人は中空を睨んで……」

「一瞬でした決意など、一瞬で消えてしまうものだ――――」


4.未完幻想トロイメライ

作詞:少女病
作曲:RD-Sounds

「魔女に双子の兄を連れ去られ、
その時の恐怖から声帯をも奪われた少女。
声の出せなくなった彼女を目の当たりにした魔女は大いに喜
び、気まぐれに命だけはとらずに生かし続けていた……」

泣き腫らした瞳には 幾度の夜が過ぎ去った現在も
あの日が網膜に薄く焼きついてた
家族に守られて 狭く優しいセカイに生きて
頼れる存在を失った少女は

沈黙の中で なけなしの勇気を持って
神にではなく自らに祈る――――

幸せな記憶の詰まった家を 有無を言わさず
厄介払いだと家主に追い出され
眠る場所さえなく 手を差し伸べる者もいなくて
過酷な現実に打ちのめされるけど

「生きてさえいれば、必ず機は訪れる」、と
兄の言葉に想い馳せ涙拭う

仰ぎ視た深緑の夢 今は遠い幻想に消えて
もう二度と戻れぬ場所に 追憶を捧ぐ...

「この瞬間もどこかで。ねぇ、心配してるかな?」
自分のことよりも 私の身を案じてる風景が
目に浮かぶようで胸が ah... 絞めつけられて――――

「他に親類もおらず、頼れる者もいない。
そんな少女が一人で簡単に生きていけるほど、
この世界は優しくできてはいない。
ましてや声の出せない彼女には、意志の疎通さえも難しくて……」

故郷を離れ 一人では初めてゆく大きな街へ
不安抱え それでも負けないと決めて
どうにか拾われたのは 富豪の家での下働き
屋根の下眠れるだけで 涙が零れた――――

「私、頑張ってるよ。なんとかやれてるよ」
過保護な両親と 私を庇って囚われた兄の笑顔を想い

眠り...仰ぐ深緑の夢 今は遠い幻想に消えて
もう二度と戻れぬ場所に 追憶を捧ぐ...

「きっと逢いに行くから。守られてばかりの私だったけれど……」
少女はその唇を噛み締めて 淡い決意に枕を濡らした――――

「ある朝、水を汲みに井戸にいくと、
見たことのない二人が隠れるようにして体を拭っていた。
僅かだけ垣間見えた彼らの素肌には、確かに魔女の烙印があって……」

「ねぇ、見られてるっ!」

「くっ、行くぞっ」

「……っ」

「少女は必死に引き留めようとするものの、声が出ずそれも叶わない。
仕事を放り出し、無心で二人を追いかける。
きっと彼らは兄と一緒に、魔女の城に囚われていた人達に違いないと確信して。
離れ離れになってしまった兄の事が聞けるかもしれないと、
期待に胸を膨らませて……」


5.黒衣の放浪者

作詞:少女病
作曲:ピクセルビー

「幾つもの国々を見て回る旅を続ける、
どこか影のある憂いを背負った青年。
黒衣の青年は、不死なる魔女の一人、
アイリーンの影響下にある街を睥睨していた」

疲弊する 寒々しい雑踏
酷く重苦しい街は 夜に蝕まれ
歪に滲んだ 粛清に風はさざめき
幻想に終止符を刻んだ無辺の爛れた闇

風説の真偽など荒廃した
この風景をみたなら 疑うこともできはしない

キミの名をその欠片を 白夜の果てにまで連れていこう
どこにもそんな場所はないのだとわかっていても
罅割れたその欠片に 虚勢ではない無傷の姿を
いつか示し探そう 未来の物語――――

忘れえぬ あの日起きた過ち
大切な絆 存在を失った過去
その影は重く 今は絆というモノに
途方もない憧れ 抱きながら踏み出せずにいた

他人との距離を置き 関わらない
それは逃げでしかないと 自責の念を内に秘めて

「キミならばどう言うだろう?」 そんなことばかりを考えては
成長しない自分に 嘆息し拳を握る
隔たれた星の欠片 孤高の旅路に終わりは見えず
空虚に巡り彷徨う、そんな物語――――

「この国から得るものは何もないと、旅を急ごうとする青年。
そんなとき、魔女が黒狼という種族の動物達を捕らえ、
無理矢理に使役しているという話を耳にしてしまう」

熱量が奥底から 膨れ上がるようなその感覚
どこにもそんな感情はないのだと思ってたのに
罅割れたこの心を 虚勢でしかない傷ついた瞳を
今は隠して踏み出そう 闇を屠り

かつての親友の遺品 黒狼の牙での首飾り(collier)
俯き握り締めて 切り拓くは未来の物語――――

「孤高の旅を続けるその黒衣の放浪者の名は、ルクセイン。
その眼光はまるで獣の牙のように鋭く。
過去を恨みながら、遠く先を見据えて……」

「もう道を違えることはしない。俺は――――」


6.recollection

作詞:少女病
作曲:ピクセルビー

「どこにでもあるような幸せな家族。
国中に漂う不自然なまでの魔女への信仰にも、
どうにか順応して……」

貧しいことなんて 笑い飛ばせる眩しい家族(famile)
小さな家 桜草(primevere)の咲く 暖かな小庭(jardin)

咲く花のように 綺麗な顔した
フランとレスター 両親の自慢だった双子

人見知りのフランチェスカ レスターの背を離れずに

「お兄ちゃんなしでは、村の外にも出られないんじゃない?」
からかわれて頬膨らませた 優しい春の日

「御機嫌よう、みなさん。
幸せな日々をお過ごしのところごめんなさい。
じゃ……終わりにしましょう?」

「全てが引き裂かれたのは突然のこと。
たった一人で現れた魔女は彼らの言葉を待つこともなく、
愉しむように両親を殺し、そのまま双子を連れ去ろうとして……。
眼前の凶事を受け入れることのできない少女は、
ただ虚ろに叫び続けていた」

「嘘……いや……いやぁぁぁぁっっ!!」

眼下に広がる血と血の逢瀬は 思慕の跡を
命絶たれても尚 描き輝く
稚拙な御伽噺だと信じた “絆狩り”は
突如前触れなく光を壊した

何の音も聞こえない 自分の声も
彼女は全てを拒絶するように叫び続け――――

遥か蒼穹の空へと撃ち鳴らすのは
虚構求め 揺れる心の警鐘か……?

「ねぇ、煩い。お前はもういいや……」

「囁く魔女は、叫ぶフランチェスカに刃を向ける。
けれど刺し貫かれるその刹那、
レスターがその凶刃を己の身を呈して受け止めて……」

「妹だけは、こいつだけは助けてやってください。殺すのなら俺に……」

いつだって後ろにいて
いつだって守られて――――

自分も怖いくせに 小さく震えてるのに
どうしてなの?いつもみたいに
瞳を細めて 安心させるみたいに
笑って背に庇い続けてくれたのは――――

「フランチェスカは、
兄の手から流れ出る血に再び深い衝撃を受け、声を失ってしまう。
まるで、この瞬間の悲鳴で一生分の声を発し尽くしてしまったかのように。
その光景を嬉しそうにみていた魔女は、
兄であるレスターだけをその場から連れ去って……。
少女の傍に残されたものは、
寄り添いあって倒れ伏す両親の死体と、血の香りだけ」


7.Legion

作詞:少女病
作曲:ピクセルビー

「しつこく追ってきて、何が目的?
やっぱり誰かにバラす気なんじゃ……」

「泣いてないで何か言ってくれないかな、キミ」

「少女が声を出せないことなど知らない二人は、
何も答えないフランチェスカに苛立ち、
小さな刃物を手に近づいて……」

「黒か白か、始めようか?審判を」
刹那煌いた消えぬ証 暴かれて

問いは意味を成さない 口外されれば
幾多の犠牲の上に 勝ち得た炎も潰えてしまう...

錆びついた その凶器を躊躇いなく翳して
声さえあげずに固まった少女に 言葉を荒げて忘却を求めた

「さあ、そこまでだ。国が荒れていると子供達まで荒れるのか?」

害意なきポーズだけのその腕を
押し戻すように止めた者は、黒衣の放浪者(nomade)

「子供がこんな物騒な物を持ってはいけない」
諭す声は真摯にどこか優しくて

守るように 立ち塞がるその姿に少女は
兄との別離を思い出し 静かに涙を零して膝から崩れた――――

「なあ、もしかしてこの子、声が……」
「フランチェスカが言葉を発せないことに気付き、
筆談でコミュニケーションをとる。
それをきっかけに、ルクセインに促されるままに
それぞれの経緯を話し出す3人。
誤解はすぐに氷解して……」

「脅かしてごめん」

「詫びる二人に、フランは気にしないでと恐縮しながらも
懸命に兄のことを聞いていた」

「フランチェスカとどこか似てる少年もいたかもしれない……」

――――呼吸が、止まった……

名前さえも奪われる穢れた塔の中で
優しかった兄がその場所に囚われ 今でもいるかは不確かでも
拳を突き合わせ 誰からともなく視線を重ねて
出会ったばかりのレギオンは 遥かな古城を見据えてその手を掲げた

「無謀かもしれない。確かな策なんてありはしない。
けど、こうしてる間にもヤツはっ……。
……ボクは、囚われた仲間を助けに行きたい」

「フランのお兄ちゃんも、ね」

「強く頷くフランチェスカに、
そして大切な存在を想う彼らに心打たれ、
ルクセインも助力を申し出る。
大きな力を持つ魔女に対して、なんの武器も後ろ盾もない。
たった4人だけの小さな、けれどとても勇敢なレギオン」

「きっと、まるで勝ち目のない戦争だ。けれど――――」


8.終幕症候群

作詞:少女病
作曲:RD-Sounds

「あらかじめ約束されていた最期の夜。
イレギュラーなき旋律の開演。今宵、盤上の駒は揃った」

「――――はじまりのおわり。おわりのはじまり」

「もっと昂らせて……」

風のない真遠の夜に 小さな進軍の灯が無音に輝き
全ての遍く事象に 根源が或るなら壊してみせよう

其々の宿願を胸に 小さな行軍の日は訪れる
そうは眠ることなきアイリーン
永い周期を待ち続けた反逆のレギオン

無慈悲なリフレイン
聞こえがいいばかりの言葉じゃ 運命など打破できない
勝ち取るんだ 今この手で――――

射殺せ ヴェールに逃れた空隙を
滅びの詩は聞こえない 病葉舞う地を疾って
響け 怜悧な静寂を砕いて
誰一人として欠けることなく夜を抜けよう

祈りの羅列は終幕の序曲を、奏でていた――――

「誰かを救うために、別の誰かの命を奪うことはできない」

「うん。奪って赦されるのは、アイリーンの命だけ」

「見張りの兵士も殺さず、武器を奪い無力化して縛りおいておくだけ。
塔を駆け上り、どうにか囚われた仲間達の部屋に辿りつくも、
その扉は魔力で固く閉ざされていて……」

「……っ」

「ちっ、そんなに簡単じゃあないな……」

囚われの場所 そこに近づく程に
ルークとミリアに刻まれた刻印は
淡い熱を帯びて紅く輝きだした 帰還を歓待するように

射殺せ ヴェールに逃れた空隙を
滅びの詩は聞こえない 病葉舞う地を疾って
響け 怜悧な静寂を砕いて
誰一人として欠けることなく夜を抜けよう

月夜は悲劇が孵化する残響音 紡いでゆく
(嘲笑うように)
いつしか神格化された幻想も 冒涜して――――

「眠っている魔女を殺せば、魔法も解けてこの扉も開くよ。きっと」

「ああ。やるしか、ないのか……」

「塔の最上階。冷え切った部屋で椅子に腰掛けたまま眠る暴虐の魔女。
湛える余裕はそのままに、寸分も揺らぐことなく……」

「手を汚すのは俺だけでいい。子供は下がってろ」

「ルクセインが押し切る形でその役を背負い、
暗い部屋で眠る魔女にナイフを突き刺した。
声もなく。音もなく。不死なる魔女といえど、
絶命さぜるをえないほどに深く――――」


9.真実の解放

作詞:少女病
作曲:ピクセルビー

「待ち望んでいた解放の時。
久々にみる仲間達の顔は、少しやつれているようで。
けれど、変わらずそこにあった――――今も」

「ねぇ、嬉しいのに不自然にしか笑顔を作れないんだ」
魔女に矯正された 紛いモノの表情

ah...魔女の毒は 歓喜の波も抑制するほど深く
痛ましい爪痕は消えないかもしれないけど

恐る恐る控えめながら 喜びを分かち合う子供達は
鎖を外し 手を取り合い生を確かめるように

碧に染まるセカイで 産声をあげるは
狩り尽くされて失くしていた新たなる絆
血よりも色濃い絆が いつか生まれていた
強く結ばれた仲間 これからを紡ぐ幻想――――

「羨ましいな、彼らが……」

「ルクセインは、自分の役目は終わったとばかりにその場を離れ、繋
がれている黒狼達を解き放った。
そしてそのまま一言の別れさえ告げずに、単身で古城を後にする。
白夜の果てへの旅。大切な首飾りを強く握りなおして……」

「ねぇ、二人だけで逃げ出したのに僕らを責めはしないの?」
徴かな後ろ暗さ その想いを吐露した

「ルーク、例えキミがそのままどこか遠くへ逃げたとしても
多分誰一人としてその行為を咎めやしない」

「そうさ。ここで辛苦共にした家族みたいなものだ。
だから今は自由より、また生きて逢えたことがただ嬉しいんだ」

ah...残響瞬く 夜が明けようと今
白霧はただ霧散した 遠鐘鳴り響いて
空ろな光は彼等を 導くようにただ
碧に染まったセカイを 凛と照らし始めていた

「喜びに抱き合う仲間達。
けれど、彼らの表情が次第に心配げに曇っていって……」

「ルークと私の顔色が悪い?ううん、きっと疲れてるだけ」

「体が冷たいって?そんなことはない……よな?」

「……ッ!」

「面白い見世物だったわ」
囁いたのは、確かに死に絶えていた暴虐の魔女――――

「悠然と立つ魔女によって語られる真実。
ルークとミリアは、遊戯に耐えきれずに
とっくの昔に命を落としている存在であるということ」

「私の力で動いているだけ。
イレモノが綺麗だったから再利用してみたの」

「そんな……」

「いや……いやっ……いやぁぁぁぁぁぁっ!」

死の残響 魂なき亡霊のような
ルークとミリアは仲間とフランチェスカヘと向け
救いを請うような視線を刹那残して ah...
それがあるべき姿であったかのように その動きを止めた

もう二度とは動かぬ二人の残骸 ah...
どんなに強く揺すれど 瞳に光は戻らない
“愉悦”を“歓喜”を隠さず 深紅の魔女は哂う
夜を抜けることのない 哀れなるそのレギオンを――――

「可愛いお人形さん。ぜーんぶ思い通りに動いてくれちゃって。
城から逃げ出させたのも、いずれは取り残されたお友達を助けに
戻るようにと思考を巡らせたのも、みーんな私の掌の上。
思っていた以上に楽しめたわ」

「それは、少年達の絶望する表情を見たいがための新しい遊戯。
ルークとミリアは、まるで電源が切れてしまったかのように動きを止め、
もう二度と動くことはなかった……」

「残された少年達はこれ以上ないであろう絶望に突き落とされる。
そんな中で、フランチェスカは狂ったように兄の姿を探し続けていて……。
魔女はそれに気づき、何気ない風に告げる」

「あんたの探してる大好きなお兄ちゃんも、
もうとっくに死んでここにはいないよ――――」


10.残響

作詞:少女病
作曲:RD-Sounds

「そのレギオンは、死の残響でできていた。
すべては魔女アイリーンの掌の上。
小さな暇潰しのための遊戯でしかない事象。
残響の余韻は、たった一人の少女だけが担っていた。
壊れモノの少女はふらつきながら塔の端に立ち、
夢見るように空へと語りかける……。
大好きな兄に向けて。素敵な仲間との出会いを。
短い時間に深めた友情を。
それらが全て形のない幻想だったことは、
受け入れないままに……」

深すぎるその絶望を 受胎した少女は
吹き荒ぶ緋の悪意 全て飲み干した

心の壊れる音 一瞬に散る花
美しく鮮烈な その最期の残響に

詩をのせて 魔女は奏でる
埋葬された虚飾の光焦がして

「夢のような、時でした」
真実の解放を 流れる星の下でいつか誓い合った夜 明日を信じて
死によって下された 白い解放はその夢が
悪夢の中にあることを告げて――――

「――――いつか笑って、会えるかな?」
不安を小さな文字で描いた
健気にah...兄想い
問いかけるフランチェスカに 仲間は無言で頷き微笑んだ

「きっととても驚くね?私にこんな素敵なお友達ができたよ。
短い時間だけれどたくさん話したよ……」

「ねぇ答えて?お願いは最後にはいつだって
聞いてくれていたじゃない。もう我儘言わないから」
音無き言葉は 虚空へと消えてゆく 見えない何かに語るように
壊れきった瞳はもう幻想だけに

焦点を合わせて 虚構へと
嗚呼戻れないほどに ah...深く深く もう沈みきっていた――――

「さあ、次はどんな遊びをしましょうか」

「これは、最も残虐だといわれる魔女の物語。
ふふっ……おはなしは、おしまい」