1.風に流離い
作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ
「彼女に振られたんですよ」 と心療内科の先生に
相談したら 自業自得だと説教されて帰された
二度と来るかこのヤブ医者 悪いのは百も承知だ
って開き直れる程強くない さながら自己嫌悪の吹きだまり
夢とか希望とか未来は 今の僕にとっては脅しだ
その類いの漫画 小説 映画 音楽は資源ゴミ
昔は夢もあるにはあった その夢が枕元でほざく
「おまえじゃ駄目だこの役立たず 特別と思うなゴミ屑」
夢なんて無い 期待してない 無気力のまるで生きてる死体
だけどわずかに 忸怩たる思い 生きてるプライドは捨てきれない
遅い夜中に 不意に泣いたり 行ったり来たりのギリギリのサイン
月が夜空に 余裕で浮かび 早く朝よ来いと願うばかり
やるしかない所にまで 気付けば追いつめられてたんだ
方法や手段は選べない 凡庸な僕 才能不在
挑んではヘマして悩んで いつからかそれが楽しくて
笑われたのは数限りなく その度ムキになる天の邪鬼
時給幾ら余命切り売り 残された時間に苛立ち
時に裏切られたりしたよ でもそれが糧になりゃ儲け物
失うものなんて何も無い 手にする方が多いくらい
死んだ魚の眼の少年 僕はお前に感謝するぜ
夢なんて無い 期待してない 無気力のまるで生きてる死体
必死な奴に 後ろ指差し 嘲笑った奴を見返したい
ってのは建前 認められたい が目的のしがない唄うたい
勝ちなんてない 負けなんてない 死ぬまで続く無様な戦い
手を差し伸べてくれた人に ホントに感謝してるんだよ
もう少し取って置くべきだろう 鞄一杯のありがとう
やるべき事伝えるべき事 怠けりゃそこで途絶える航路
他人ではなく 面目じゃなく 自分の為に今は歌いたい
夢なんて無い 期待してない 無気力のまるで生きてる死体
だけど確かに 抗う歌に わずかながら空の光は射し
生きる力に 自ずと変わり 死に切れぬ僕の弁明と成り
風に流離い 理解し難い と言われても他に道など無い
風に流離い 理解し難い と言われても他に道など無い
風に流離い 理解し難い と言われても他に道など無い
2.ジュブナイル
作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ
自分嫌いな少年少女 ありがとうじゃ満たされぬ今日も
理解しがたい異質なイデオ はみ出し物の孤独な闘争
虐げられた少年少女 撫でる青痣、ミミズ腫れの頬
それよりも悲鳴上げる心 自分対世界の様相
「人間嫌い」っていうより 「人間嫌われ」なのかもね
侮辱されて唇噛んで いつか見てろって涙ぐんで
消えてしまいたいのだ 消えてしまいたいのだ
君が君を嫌いな理由を 背負った君のまま 成し遂げなくちゃ駄目だ
僕は讃える君等のジュブナイル 向こう見ずだっていい
物語は始まったばかりだ
自信過剰な少年少女 認められない不遇な才能
何者にもなれない怒りと それとは裏腹の自己嫌悪
誇り高き少年少女 それでも曲げぬ自分の意志を
未だ枯れない表現欲と 無謀さを武器に駆ける浮世
僕らに変な名前を 付けたがるのはいつも部外者
「綺麗事だ 理想論だ」 って理想も語れなきゃ終わりだ
僕らここに居るのだ 僕らここに居るのだ
君が君を信じる根拠を 誇示する君のまま やり遂げなくちゃ駄目だ
僕は讃える君等のジュブナイル 世間知らずだっていい
物語は始まったばかりだ
そこから一歩も動かないのなら 君は「侮辱された人間」だ
そこから一歩歩き出せたら 君は「負けなかった人間」だ
怖いとは言うべきじゃないな 辛いとは言うべきじゃないな
どうせ誰も助けてくれない それを分かって始めたんだろう
「誇り高き少年少女 それでも曲げぬ自分の意志を
未だ枯れない表現欲と 無謀さを武器に駆ける浮世」
君が君で居られる理由が 失くしちゃいけない 唯一存在意義なんだ
ここに讃えよ愚かなジュブナイル 最後の最後に 笑えたらそれでいいんだよ
物語は始まったばかりだ
3.春待ち
作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ
駅を背にして右の路地 貨物倉庫の突き当たり
コインランドリーのはす向かい あの子の家に向かう道
たどる記憶は数あれど たどる道ならこれだけと
やがて捨て行く胸中の 感傷だけで暖をとる
或る町 多雨去り べた雪 水雪
最後に 歯向い 舞う雪 春待ち
高波 間に間に 這う鳥 白夜に
間違い 吐く闇 お悔やみ 春待ち
この先 増す闇 それ等に たじろぎ
やおらに 描く歌詞 価値なし 春待ち
花咲き 秒読み かすかに 注ぐ陽
幸先 この日に 去る街 春待ち
いずこに 春待ち
4.性善説
作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ
ねえママ あなたの言う通り 彼らは裁かれて然るべきだ
奪えるものは全部奪っていった 崩れたビルに 戦車と夕日
ねえママ あなたの言う通り 隣人は愛して然るべきだ
陰口ほど醜いものはないわ 手を取り合って 微笑み合って
こんな時代に 生き延びるだけでも 容易くはないわ どうか幸せに
寝ぼけ眼でテレビをつけて ぼやけた頭に無理矢理流れ込んだ
殺人だ強盗だ人身事故だ 流行だアイドルだ もう うるせえよ
人心地つける余裕もなく 僕らの日々は流れに摩耗して
明るいニュースを探している 明るいニュースを探している
ねえママ あなたの言う通り 他人は蹴落として然るべきだ
幸福とは上位入賞の勲章 負けないように 逃げないように
目を覆い隠しても 悲鳴は聞かされて 耳を塞いでも 目をこじ開けられて
真っ白な朝日に急かされて あの子の家に向かう電車の中
馬鹿な男の下世話な自慢話に 子供を連れ車両を変える母親を見たよ
各々の思想がぶつかり合って 満員電車は個人的な紛争地帯
僕は僕を保つので精一杯で その実誰かの肩にもたれていたよ
ねえママ あなたは言ったじゃないか 嘘をつけばバチがあたると
神に祈れば救われると 苦労はいつか報われると
ねえママ 僕は知ってしまったよ 人間は皆平等だと
世界はあるがまま美しいと それ等は全くの詭弁であると
否定されてしまった性善説の 後始末を押し付けられた僕らは
逃げ場もなく小箱に閉じ込められて 現実逃避じゃなきゃ もう笑えねえよ
「人は本来優しいものですよ」 それが嘘だと暴いたのはあんただろ
教育だ宗教だ道徳だ 何でもいいから早く次のをくれよ
ねえママ あなたの言う通り 自分を善だと信じて疑わないときは
他方からは悪だと思われてるものよ あなただけが私の善なのよ
5.ミサイル
作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ
取り返しの付かない未来は 今更どうすることも出来ないと
鈍色に輝きをくすぶらせて ワンルームのベッドの中で不貞寝している
つけっぱなしにしたテレビでは アナウンサーが黒い服を着て
参列者に話を聞いている 「未来がお亡くなりになりました」
テロ関連施設ミサイル攻撃のニュースを聞きながら
胸を痛めてみせる家賃未納の夢にぶら下がる僕の頭上を
人生を俯瞰でしか感じられない僕らの日常を
すれすれにかすめてミサイルが飛んでった
僕らの自由とはミサイルで 僕らの自由とは平和主義で
全てを作り直したくて 全てを壊してみたりする
僕らの自由とは芸術で 僕らの自由とはリストカットで
全ての人に認められたくて 全ての人を憎んだりする
誰が悪いとか 言ったって 等しく惨めに命を這いずって
「死にたくねぇ」と言えばそれですんでしまう それだけに何百小節も費やして
年3万人の自殺者の切迫した動機のそれぞれを
食い物にする唄うたいとワイドショーの明確な類似性を
人生の気まずさを 穴埋めしたいが為の大義を
すれすれにかすめてミサイルが飛んでった
僕らの自由とは心療内科で 僕らの自由とは承認欲求で
全ての人に優しくされたくて 傷ついた振りをしてみたりする
僕らの自由とは信仰で 僕らの自由とは唯物論で
全て人のためだと言い聞かせて 奪い合っていたりする
固有名詞に放たれた銃声は 僕らにとっては時報程の響きで
上空を通り過ぎたミサイルは 未だ誰の「心」にも落下せず
自堕落な生活の果てに待つ結末ののっぴきならなさと
暗雲たれ込める時代の不安がはからずもリンクした
「どうせならこの もやもやを ろくでもないこの世界を」
なんて口走る自己弁護を 吹き飛ばしてくれよ
僕らの自由とは帰らぬ日々で 僕らの自由とはこぼれるひとしずくで
全て願えば報われると 明けない夜に願ってる
僕らの自由とは背徳で 僕らの自由とは不自由で
ただ一つを手にするために 全てを投げ捨てたりする
6.僕は盗む
作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ
星を盗む。オリオン座を盗む。リゲルを盗む。
小さい頃読んだ物語を盗む。エンディングを盗む。
プロローグを盗む。体育館に横たわるあの子の物思いを盗む。
性的な初夏の涼風を盗む。煙草を盗む。
煙を盗む。感傷のつんざく様な痛み以外を盗む。
夜を盗む。のたうち回る僕の輪郭を切り落として盗む。
その空欄を埋める為の、よく出来た嘘を盗む。
旅人の軌跡だけを盗む。西日の射す部屋で聞いた雨音を盗む。
盗まれた過去を盗む。
ちぎれ雲が北へ南へ、僕は途方に暮れて突っ立って。
優しい人になりたくて、完璧な人になりたくて。
あれこれ探していたけれど、そいつを届けてあげたいけれど。
もう間に合いそうもない。とても間に合いそうもない。
僕の影よ。僕らはずっとこのままだ。
7.パーフェクトライフ
作詞:秋田ひろむ
作曲:秋田ひろむ
上手くいかねぇや っていつもの事だろ
不出来な人間なのは 痛いほど分かってる
さっき飲み込んだあの言葉は
日の目を見る事も きっとないんだろうな
そうやって積もった 部屋の埃みたいな
感情が僕等を息苦しく させてるんなら
自分を守りたくて 閉め切ったドアも窓も
無理してでも開けなきゃ 窒息しちゃうよ
悩みはどうせ消えない 振り回されてばかりの 世界の中で
おぼれそうに もがきながら それでも悪くないなって 思えるものが
どれだけあったら失敗じゃない? 僕らの人生は
完璧な人になりそこねたよ なんもねぇ人生
人の心に 土足で入り込んで
ドアも窓も勝手に 開け放ったあなたの
おかげで僕は人生を 台無しにしちゃうような
素敵な風景に 出会えたんだ
どこから始まって どこまで続くのか
この物語の落とし前をどうやってつけようか
いつだって考えるけど 答えは今も見つからないんだよ
けど今日が終わりじゃない事だけは分かってる
どこまでいけるか 分からないんだけどさ
スタートラインに ようやく立てたよ
こんな風に 僕等を駆り立てる出来事が
どれだけあったら失敗じゃない? 僕らの人生は
完璧な人になりそこねたよ 何もねぇ人生
不完全な青春終えて 不完全な夢を見て
不完全な挫折の末に 不完全な大人になって
でも不完全なやりかたで 不完全なりに生きてきた
君自身は疑いようも無い
出会いと別れにただ泣き笑い それだけの人生か でも
それだけあったら失敗じゃない 僕らの人生は
完璧な人にはなれないけれど 完璧な人生
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