金田たつえ全曲集 囲炉裏

金田たつえ 金田たつえ全曲集 囲炉裏歌詞
1.囲炉裏

作詞:高橋直人
作曲:山本優

茶碗で獨酒 呑みながら
背中屈めて 薪を焼べ
父は黙って 火を見てた
揺らめく囲炉裏の 火を見てた

煤けた梁から 吊るされた
自在鉤には 黒光り
南部鉄瓶 湯気を吐く
溜息みたいに 湯気を吐く

※昔 囲炉裏の回りに 人が居た
爺ちゃん婆ちゃん 元気な父と母
昔 囲炉裏の回りに 人が居た
貧しいながらも 片寄せ暮らしてた
そこには家族の 温もりがあった※

歪んだ板戸の 隙間から
風がこっそり 忍び込み
寒さ残して 吹き抜ける
火の無い囲炉裏を 吹き抜ける

横座に座って 目を閉じりゃ
父の姿が また浮かぶ
ここで人生 思ったか
子供の行く末 思ったか

昔 囲炉裏の回りに 人が居た
兄弟六人 それから猫たちも
昔 囲炉裏の回りに 人が居た
行商おばさん 富山の薬売り
そこには心の 触れ合いがあった

(※くり返し)


2.黒髪ざんげ

作詞:木下龍太郎
作曲:保田幸司朗

罪を背負って この世の中に
女は生まれて 来るのでしょうか
心ならずも 背いた男の
怨み声やら 笹の風
嵯峨野 隠れ家
ああ 黒髪ざんげ

いつか馴染んだ 花街川に
流した浮名は いくつでしょうか
どれも真実を 捧げたものを
野暮な世間が嘘にする
嵯峨野 迷い路
ああ 黒髪ざんげ

生きる限りは 男に罪を
重ねて行くのが
運命でしょうか
髪を束ねて 剃刀当てて
切れぬ迷いの 糸を切る
嵯峨野 白露
ああ 黒髪ざんげ


3.しのび恋

作詞:三浦康照
作曲:石中仁人

一つの傘を 二人で持って
人目をさける 雨の町
今夜はあなたを 帰さない
わがまま云って 甘えたら
きっとあなたは 困るでしょうね
炎えて悲しい あゝしのび恋

あなたの愛を ただひとすじに
たよって生きる 私です
いけないことと 知りながら
別れてくれと 云うまでは
たとえ地獄へ 落ちてもいいの
ついてゆきます あゝどこまでも

あなたの妻に なる日は夢ね
夢でもいいの 信じたい
夜明けの部屋に 残されて
涙を拭いて いたことを
きっとあなたは 知らないでしょう
辛さこらえる あゝしのび恋


4.夜の蝉

作詞:萩原たかし
作曲:花笠薫

あられなく胸をふるわせ 夜鳴く蝉は
誰に焦がれて 泣くのでしょうか
好きで別れた あなたに逢えた
この橋を渡れたら
棄てて悔いない ああ迷い川

好きだよと 拒むすべなく さしだす傘に
耳を染めても 不埒でしょうか
まわり舞台の 道行きならば
赦される 恋路でも
他人は指さす ああ罪の川

狂おしく 命しぼって 夜鳴く蝉は
何処で未練を 消すのでしょうか
息を殺して くるめく闇に
うたかたの 肌を焦がす
生きる縁の ああ幻想の川


5.湯の町椿

作詞:仁井谷俊也
作曲:南郷孝

かくれ咲きした 椿の花に
どこか似たよな 身のさだめ
いくら好きでも この世では
一緒になれない ひとだもの
炎えて悲しい… 湯の町椿

宿の浴衣に 羞じらいながら
酔ってあなたに 躰をまかす
離れられない ふたりなら
このまま愛しい 胸の中
いっそ散りたい… 湯の町椿

帰り支度の 貴方の背中に
次の逢瀬を またせがむ
悪いおんなと 云われても
誰にも渡せぬ 恋だもの
夢に生きたい… 湯の町椿


6.夢螢

作詞:菅麻貴子
作曲:深谷昭

季節はずれの 螢がひとつ
そっとあなたに すがって生きる
「春をください」 この手のひらに
闇にはらはら 舞い散る雪は
女ごころの 夢追い螢

少し遅れて うしろを歩く
そんな癖さえ ぬけない私
「明日をください」この手のひらに
あなたのために 尽くせるならば
遅れた春を 悔やみはしない

窓に積もった運命の雪も
やがて溶ければ 明日が見える
「夢をください」 この手のひらに
涙ひとすじ 夜霧に変えて
命を灯す しあわせ螢


7.博多恋ごよみ

作詞:石本美由起
作曲:岡千秋

飲んで 嬉しい お酒もあるが
酔うて 泣きたい 酒もある
博多 那珂川筑前しぐれ
とても 逢いたか あん人を
待って 切ない 秋のくれ
はぐれ女の 恋ごよみ

「あん男の 熱か 情が
思いだされて ひとりの夜は
無性にお酒が 飲みとうなると
女って 駄目ばい
ああ今夜も中洲の時雨が
私の心を 泣かすっとよ・・・」

喧嘩別れを したのじゃないが
なんで冷めたい 雨までも
中洲 泣き面 筑前しぐれ
どこへ置いたか あん人と
夫婦きどりの 傘もない
愚痴につまずく 路地ばかり

女 ひとり寝 夢まで寒い
肌に 温もり 感じたい
博多 川端 筑前しぐれ
酔うて甘えて あん人の
腕に抱かれた 思い出が
酒に ちらつく 淋しいよ


8.能登の火祭り

作詞:横山賢-
作曲:花笠薫

能登の火祭り 月夜の浜に
キリコの若衆 渦を巻く
わたしもあなたに 口説かれたなら
身を灼く女に 変わりそう
飲んでもいいわ
御陣乗太鼓の 浮かれ酒

まるで大漁の 巻網起こし
お神輿火の中 水の中
つがいの鴎が 飛び立つように
ふたりになりたい 夢見頃
さらっていいわ
いのちの祭りに 悔いはない

能登の火祭り かがり火よりも
ぶつかる人波 なお熱い
あなたと寄り添い 宇出津(うしつ)の宿へ
向かえばやさしく 海が鳴る
抱いてもいいわ
しあわせ呼ぶよな 腕のなか


9.浪花なさけ橋

作詞:一ツ橋雪
作曲:池田八声

着物には きりりと帯を締めるよに 浪花の川には
恋情(なさけ)行き交う 橋があります

“何や弱みそ”と 泣き泣き詰(なじ)り
びんた一打ち あんたの頬に
励ますつもりやったと 詫び切れず
想い出たどる 堂島川は
枯葉浮かべて 秋から冬へ
今も逢いたい 浪花の ああ 人恋天満橋

“末は いっしょに”と 嬉しさ抱いて
中之島から 水晶橋へ
互いにお初天神 手を合わす
嘘などないわ あの日のあんた
酔えば淋しい 曽根崎新地
未練捨てても 浪花の ああ 夢追う大江橋

“早う帰りや”と 鳴る澪標(みおつくし)
いつも馴染んだ 鐘の音沁みる
可愛女性(ええひと)見付けあんたも 気張ってや
小雪がちらり 土佐堀川に
うちも負けへん 涙で誓う
鳩がむれ遊(と)ぶ 浪花の ああ 春待つ淀屋橋


10.ふたりの愛染橋

作詞:池田充男
作曲:伊藤雪彦

熱い男の まなざしで
ついて来るかと 聞くあなた
ここから戻れば また不幸せ
目には見えない 赤い糸
結ぶ縁(えにし)の 橋ならば
あなたと渡りたい 愛染橋(あいぜんばし)を

紅を濃いめに よそゆきの
顔で笑って 生きてきた
わたしの幸せ 泣きたいときに
なみだ分けあう ひとがいる
それがあなたよ 連れてって
ふたりで渡りたい 愛染橋を

夢をうかべて ゆく川の
水にうつした 影法師
あなたの支えに なれるでしょうか
世間知らずの このわたし
三歩離れず 寄り添って
明日へ渡りたい 愛染橋を


11.かくれ傘

作詞:荒川利夫
作曲:保田幸司郎

ふたりは夫婦に 見えるでしょうか
揃いの浴衣の いで湯橋
傘に隠した こころの中に
離れられない 命火よ
涙のような…
雨を写した 川を見る

あなたをこんなに 愛してしまう
私が悪いと 叱る雨
ひとりぼっちを 支えてくれる
そんなあなたが いればこそ
明日もここで…
山の紅葉に 染まりたい

逢ってはいけない もう駄目だよと
言われる恋でも 恋は恋
傘に隠れて 逢いたい想い
捨てゝどうして 生きられる
涙のような…
雨を写した 川を見る


12.風の追分みなと町

作詞:仁井谷俊也
作曲:蘭一二三

風の江差に 来てみれば
はぐれ 鴎が 波に舞う
あなたお願い帰ってきてよ
日暮れの海に名を呼べば
老いたヤン衆の 老いたヤン衆の 追分が
おんな泣かせる 港町(みなとまち)

あなた偲べば 鴎の島にヤンサノ-エ-
沈む夕陽も なみだ色

浜に埋もれた 捨て小舟
どこか私に 似た運命
ほろり落とした涙のなかに
やさしい笑顔浮かぶ夜は
海の匂いの 海の匂いのする 酒場で
吐息まじりの こぼれ酒

窓の向こうの 漁火は
女ごころの 命火よ
いつか逢えるわ あなたに逢える
浴衣につつむ 湯あがりの
燃える素肌が 燃える素肌が あの夜を
思いださせる 港宿(みなとやど)


13.無法松の一生(度胸千両入り)


14.道導


15.お母さん

作詞:関口義明
作曲:花笠薫

どなたですかと 他人のように
わたしを見上げて きく母の
笑顔は昔と 変わらぬものを
いいのよ いいのよ お母さん
やせた手をとり うなずきながら
あふれる涙が 止まらない

苦労親坂 女手ひとつ
なりふりかまわず 五十年
働き続けて くれたんだもの
いいのよ いいのよ お母さん
淡い陽射しの 硝子戸越しに
今年も咲いてる 花すすき

母の背中で ねんねの歌を
きかせてもらった あの道を
今度はわたしが おぶってあげる
いいのよ いいのよ お母さん
心やさしい みんなの中で
いのちを灯して また明日も


16.花街の母

作詞:もず唱平
作曲:三山敏

他人にきかれりゃ お前のことを
年のはなれた妹と 作り笑顔で 答える私
こんな苦労に ケリつけて たとえひと間の部屋でよい
母と娘の 暮しが欲しい

いくらなじんだ水でも 年頃の娘のいる
左褄(ひだりづま)
住みにくうございます
浮名を流した昔もありましたが…
ああ あのひと
私を残して死んだ あの人を恨みます

厚い化粧に 憂いをかくし
酒で涙をごまかして 三味にせかれて つとめる座敷
あれが子持ちの芸者だと バカにされても夢がある
それはお前の 花嫁姿

女の盛りはアッという間です 若い妓の時代
もう私はうば桜 出る幕ないわ
でも もう少し この花街に 私を置いて下さい
せめてあの娘に いい花聟が 見つかりますまで

何度死のうと 思ったことか
だけど背で泣く 乳呑児の 声に責められ十年過ぎた
宵に褄とる女にも きっといつかは幸福が来ると
今日まで 信じて生きた