都はるみ全曲集 枯木灘残照

都はるみ 都はるみ全曲集 枯木灘残照歌詞
1.アンコ椿は恋の花

作詞:星野哲郎
作曲:市川昭介

三日おくれの 便りをのせて
船が行く行く ハブ港
いくら好きでも あなたは遠い
波の彼方へ 行ったきり
アンコ便りは アンコ便りは
ああ 片便り

三原山から 吹き出す煙
北へなびけば 思い出す
惚れちゃならない 都の人に
よせる思いが 灯ともえて
アンコ椿は アンコ椿は
ああ すすり泣き

風にひらひら かすりの裾が
舞えばはずかし 十六の
長い黒髪 プッツリ切って
かえるカモメに たくしたや
アンコつぼみは アンコつぼみは
ああ 恋の花


2.涙の連絡船

作詞:関沢新一
作曲:市川昭介

いつも群れ飛ぶ かもめさえ
とうに忘れた 恋なのに
今夜も 汽笛が 汽笛が 汽笛が
独りぽっちで 泣いている
忘れられない 私がばかね
連絡船の 着く港

きっとくるよの 気休めは
旅のお方の 口ぐせか
今夜も 汽笛が 汽笛が 汽笛が
風の便りを 待てと言う
たった一夜の 思い出なのに
連絡船の 着く港

船はいつかは 帰るけど
待てど戻らぬ 人もあろ
今夜も 汽笛が 汽笛が 汽笛が
暗い波間で 泣きじゃくる
泣けばちるちる 涙のつぶが
連絡船の 着く港


3.好きになった人

作詞:白鳥朝詠
作曲:市川昭介

さよなら さよなら 元気でいてね
好きな二人は いつでも逢える
たとえ別れて 暮らしても
お嫁なんかにゃ 行かないわ
待って 待って 待っているのよ 独りでいるわ
さよなら さよなら 好きになった人

さよなら さよなら 指切りしてね
固い約束 忘れはしない
恋をしたのも 泣いたのも
そうねあなたと このわたし
好きで 好きで 好きでいるのよ 愛しているわ
さよなら さよなら 好きになった人

さよなら さよなら 泣いたらだめね
つらい気持ちは あなたも同じ
ひとり待ってる わたしには
倖せもって 帰ってね
早く 早く 早く帰って 笑ってみせて
さよなら さよなら 好きになった人


4.おんなの海峡

作詞:石本美由起
作曲:猪俣公章

別れることは 死ぬよりも
もっと淋しい ものなのね
東京をすてた 女がひとり
汽車から船に 乗りかえて
北へ流れる…
夜の海峡 雪が舞う

砕けた恋に 泣けるのか
雪がふるから 泣けるのか
ふたたび生きて 逢う日はないと
こころに決めた 旅なのに
みれん深まる…
夜の海峡 わかれ波

いのちと想う 愛も無く
海の暗さが 眼にしみる
汽笛よ 波よ おしえておくれ
私の明日は どこにある
こころ 冷たい…
夜の海峡 ひとり旅


5.北の宿から

作詞:阿久悠
作曲:小林亜星

あなた変わりはないですか
日ごと寒さがつのります
着てはもらえぬセーターを
寒さこらえて編んでます
女ごころの 未練でしょう
あなた恋しい 北の宿

吹雪まじりに汽車の音
すすり泣くよに聞こえます
お酒ならべてただひとり
涙唄など歌います
女ごころの 未練でしょう
あなた恋しい 北の宿

あなた死んでもいいですか
胸がしんしん泣いてます
窓にうつして寝化粧を
しても心は晴れません
女ごころの 未練でしょう
あなた恋しい 北の宿


6.大阪しぐれ

作詞:吉岡治
作曲:市川昭介

ひとりで 生きてくなんて
できないと
泣いてすがればネオンが ネオンがしみる
北の新地は おもいでばかり
雨もよう
夢もぬれます ああ大阪しぐれ

ひとつや ふたつじゃないの
ふるきずは
噂並木の堂島 堂島すずめ
こんなわたしで いいならあげる
なにもかも
抱いてください ああ大阪しぐれ

しあわせ それともいまは
ふしあわせ
酔ってあなたは曽根崎 曽根崎あたり
つくし足りない わたしが悪い
あのひとを
雨よ帰して ああ大阪しぐれ


7.夫婦坂

作詞:星野哲郎
作曲:市川昭介

この坂を 越えたなら
しあわせが 待っている
そんなことばを 信じて
越えた七坂 四十路坂
いいの いいのよ あなたとふたり
冬の木枯し 笑顔で耐えりゃ
春の陽も射す 夫婦坂

女なら 花ならば
咲くときも 散るときも
見ててほしいの あなたに
宿命あずけて 暮らしたい
いいの いいのよ 一間の部屋で
あなた待ってる 雪割草も
いつか芽をふく 夫婦坂

流れゆく 人の世の
哀しみに泣いたなら
杖になってね 抱いてね
肩を貸してね 背負ってね
いいの いいのよ ふり向かないわ
曲がりくねった 坂道だけど
ついてゆきます 夫婦坂


8.千年の古都

作詞:吉岡治
作曲:弦哲也

約束もなく 日が暮れて
衣笠山に 一番星です
蚊柱を追う 蝙蝠(こうもり)も
機織る音も 変わらないですね
夏は 火の車 抱いたまま
冬は 心に闇を 凍らせて
母が唄った 星の歌
あの星は あの星は
あなたにとって 何ですか
あぁ 時は身じろぎもせず
悠久のまま
あぁ 時は身じろぎもせず
悠久のまま
千年の古都

これほど星が 多いとは
玻璃(ガラス)の街で 忘れていました
根付の鈴を 嬉しさに
地蔵の辻で 鳴らしてみました
春は 秘めやかに 若葉雨
秋は 燃えたつような 曼珠沙華
母が祈った 流れ星
陽は昇り 陽は昇り
別離と出会い 繰り返す
あぁ 夢は老いることなく
悠久のまま
あぁ 夢は老いることなく
悠久のまま
千年の古都

あぁ 時は身じろぎもせず
悠久のまま
あぁ 時は身じろぎもせず
悠久のまま
千年の古都


9.小樽運河

作詞:吉岡治
作曲:弦哲也

精進おとしの 酒をのみ
別の生き方 あったねと…
四十路半ばの 秋が逝き
セピア色した 雨が降る
イエスタデイを 聴きながら
ふたり歩いた あァ小樽運河

誰のせいでも ないけれど
これで終わるの 始まるの
あなたほんとの 男なら
わたし独りに させないわ
イエスタデイを 抱きしめて
ゆらぐガス燈(ライト) あァ小樽運河

上りのディーゼル 待ちながら
やっぱり明日も 漂って
傘はあなたに 貸したまま
セピア色した 雨が降る
イエスタデイを もう一度
窓の向うに あァ小樽運河

イエスタデイを もう一度
窓の向うに あァ小樽運河


10.邪宗門


11.夕陽坂

作詞:坂口照幸
作曲:市川昭介

歩いて歩いて ここまで来たわ
「あなた」「おまえ」と いたわりながら
続く坂道 雨風あらし
いいじゃない いいじゃない
いつの日か 陽は射すものね
……しぐれ坂
明日も明日も そのまた明日も
あなたと夕陽を 見ていたい

ちいさなちいさな ちいさな夢を
ふたり咲かせて 今日まで来たわ
酒の好みも 生き方までも
そうなのね そうなのね
つれあいは 似てくるものね
……夫婦坂
明日も明日も そのまた明日も
あなたと夕陽を 見ていたい

いつでもいつでも 望みは一つ
生きてゆくこと あなたとふたり
どうぞ下ろして 肩の荷なんか
いいじゃない いいじゃない
影さえも 重なるものね
……夕陽坂
明日も明日も そのまた明日も
あなたと夕陽を 見ていたい


12.ムカシ

作詞:阿久悠
作曲:宇崎竜童

ムカシ ムカシ そのムカシ
いいことばかりがあったそな
ほんとに ほんとに いいことばかりで
ムカシって凄いんだな

きみの部屋に オバケが住みついていないかい
ほんの小さな 掌(てのひら)にのるくらい
可愛いオバケで 名前はムカシという
こいつにうっかり住みつかれたら
きみも駄目になってしまうぞ
何故って そいつは ムカシ話で
いい気持ちにさせるオバケなんだ

“あの日あなたは強かった”
“あの日あなたは偉かった”
“あの日あなたは華だった”
あの日 あの日で うっとりさせ 駄目にする
気をつけなよ ムカシって奴だよ

きみはとうに ムカシをあの部屋に入れてるね
きっと毎晩 いい酒を飲みながら
可愛いオバケと 愉快に話してるのだろ
今からでもいい 追い出してしまえ
君は明日を捨ててしまうぞ
何故って そいつは 俺のところに
この前までおったオバケなんだ

“あの日あなたは強かった”
“あの日あなたは偉かった”
“あの日あなたは華だった”
あの日 あの日で うっとりさせ 駄目にする
追い出しなよ ムカシって奴をよ

“あの日あなたは強かった”
“あの日あなたは偉かった”
“あの日あなたは華だった”
あの日 あの日で うっとりさせ 駄目にする
追い出しなよ ムカシって奴をよ

ムカシ ムカシ そのムカシ
いいことばかりがあったそな


13.今ひとたびの~Vaya Con Dios~

作詞:ちあき哲也
作曲:杉本眞人

場末あたり 掛かりそうな 名画みたい
とっぴ過ぎて こんな出遭い 怖くなるわ…
窓の下は 永遠(とわ)に仏陀(ぶっだ) 眠る森ね
夕陽の中 孔雀も 落ちて行く…

Vaya Con Dios 誰が
恋 叛(そむ)かせた 昔
Vaya Con Dios 駄目よ
無邪気に 崩れる 年じゃない
今ひとたびでも 甘い喘(あえ)ぎ
夢 見た くせに Te, Amor

愛の深い 疵(きず)は時間(とき)が かかるものね
そして後の 情事(こい)はどれも 演技だった…
疲れ切った 胸と胸が 同じ異国(くに)へ
偶然など ないとか 聞き飽きた…

Vaya Con Dios やめて
俺 死にに来た なんて
Vaya Con Dios いいわ
逸(はぐ)れた 女で よかったら
今ひとたびだけ 沙羅樹(さら)の苑(その)へ
死ぬ 気で 抱いて Te, Amor

Vaya Con Dios 平気
この 精霊の 古都(まち)で
Vaya Con Dios いつか
壊れた いのちも 蘇る
今ひとたびこそ 宿命(さだめ)ならば
身も 世も 捧(あ)げる Te, Amor


14.抱きしめて

作詞:坂口照幸
作曲:市川昭介

心こんなに寒いわ あなたといても
そうよ身体も凍える どうして? それは何故?
ワイングラス 砕けて ゆらゆらと
赤い海の底へ 堕ちてゆく私
だからもっと もっと 強く抱きしめて
もっと もっと 強く抱きしめて

帰らないひと待つのも いつもの私
うしろ姿を見送る いつものまた私
追えば逃げる 縋れば消えてゆく
吐息だけが残る 愛は蜃気楼
だからもっと もっと 強く抱きしめて
もっと もっと 強く抱きしめて

明日のことなど見えない 誰でも同じ
一つ分かっていること 終わりが来ることね
夢のつづき あなたとこのままで
今を生きていたい 夜よ明けないで
だからもっと もっと 強く抱きしめて
もっと もっと 強く抱きしめて


15.命ゆきどまり(デュエット:岡千秋)

都はるみ&岡千秋
作詞:たかたかし
作曲:岡千秋

川面を渡る 身を切る風に
骨をきしませ 漂う舟よ
日がな一日 この川を
上り下りの 時代(むかし)もあった

他人(ひと)に踏まれて おまえと哭いた
夜に追われて あなたと泣いた
ここがふたりの ゆきどまり
月は冴えても そぼ降るしぐれ

忘れ去られた舟よ もの言わぬ舟よ
在りし日の歌でも 風に聴いているのか

命枯れても 未練はないさ
ついてゆきます 夕陽の果ても
ここがふたりの ゆきどまり
哀れさみしき かえらぬ夢よ

川は流れる人の 人の世の闇を
いとおしきおまえと 明日はどこへ流れる
いとおしいあなたと 明日はどこへ流れる


16.枯木灘 残照

作詞:道浦母都子
作曲:弦哲也

両手(もろて)にて君が冷えたる頤(おとがい)を
包みていしは冬の夕駅
君に妻われに夫(つま)ある現世(うつしよ)は
姫浜木綿(ひめはまゆう)の戦(そよ)ぐ明かるさ
歳月(とき)はながれて 歳月はながれて いまひとり
あゝ残照の枯木灘
ひたすらにあなたのもとに翔けてゆく
煌きつづけよ光の凪よ

取り落とし床に割れたる鶏卵を
拭きつつなぜか湧く涙あり
乳房(ちちふさ)の尖(さき)に点(とも)れる螢火(ほたるび)の
ほとほと紅(あか)しほとほとやわし
夢に疲れて 夢に疲れて 立ちつくす
あゝ残照の枯木灘
子午線を越えて吹き来る潮騒よ
夜のしじまにこの身も攫(さら)え