1.さくら月夜
作詞:下地亜記子
作曲:弦哲也
あの人 吉野(よしの)の 千本桜(せんぼんざくら)
姿よけれど チョイト 木が多い
その気ありそで なさそうで
女心を ユラリともてあそぶ
エェ…お月さん お月さん エ…女はつらい つらいネ
恋は儚い 夢桜 サァ チョイサ チョイサ
浮気な鶯(うぐいす) 梅の木焦(じ)らし
わざと隣の チョイト 桃(もも)で啼(な)く
粋(いき)な船宿 柳河岸(やなぎがし)
逢えば甘えて ホロリと夢見酒
エェ…お月さん お月さん エ…女はつらい つらいネ
恋は一夜の 夢花火 サァ チョイサ チョイサ
ぞっこん惚れたと 言われてのぼせ
燃えた心に チョイト 春の風
野暮はおよしよ その先は
嘘と本音が チラリと見え隠れ
エェ…お月さん お月さん エ…女はつらい つらいネ
恋は桜の 夢吹雪 サァ チョイサ チョイサ
2.歌謡芝居 九段の母
作詞:石松秋二
作曲:能代八郎
上野駅から 九段まで
かってしらない じれったさ
杖(つえ)をたよりに 一日がかり
せがれきたぞや 会いにきた
空をつくよな 大鳥居(おおとりい)
こんな立派な おやしろに
神とまつられ もったいなさよ
母は泣けます うれしさに
【セリフ】
「せがれや とうとう来ただよ やっと来ただよ
この命のあるうちに 足腰の動くうちに
一度は参らにゃ死ぬにも死ねん思いじゃった
病気でずーっと寝たっきりだった父ちゃんも
去年の冬 とうとうおめぇの傍へ
行ってしもうて 母ちゃん 一人ぼっちになってしもうた
せがれや 父ちゃんに会ったかや 父ちゃんに会ったら
一緒に酒でも飲んで 昔話や戦地の話をしてやってくんろ
おめぇに先立たれて 父ちゃん 心の支えを失くした様じゃった
戦死の知らせを 聞いたときゃ
握り拳 床に叩きつけて 涙こぼしていただよ
その夜は 布団かぶって 背中震わせて
ずーっとずーっと泣いていただよ」
両手あわせて ひざまづき
おがむはずみの おねんぶつ
はっと気づいて うろたえました
せがれゆるせよ 田舎もの
鳶(とび)が鷹(たか)の子 うんだよで
いまじゃ果報(かほう)が 身にあまる
金鵄勲章(きんしくんしょう)が みせたいばかり
逢いに来たぞや 九段坂
【セリフ】
「おめぇのお陰で 国さからぎょうさんご褒美もろて…
そうじゃ そうじゃ こんな立派な勲章までもろて…
それにな 村の役場の偉えお人も母ちゃんに頭を下げてくんなすった
あぁ ありがてぇ あぁ もってぇねぇ…
…でもな…でもな…勲章やお金をいくらもろても 母ちゃんちっとも
嬉しいことなんかねぇ こんな触っても冷てえ勲章より
おらぁ おめぇの温(あった)けえ
手に触りてぇ…
お国のためじゃと おめぇは勇んで行ったが
帰って来たときゃ ちいせえ箱ん中であんな姿で…
あんまりじゃ…あんまりじゃ…
玉が当たってさぞや痛かったろう…つらかったろう…淋しく死んでった
おめぇの背中 さすってやりてぇ…抱きしめてやりてぇ…
母ちゃんの作った芋の煮っ転がしを食わしてやりてぇ…
せがれや、おらぁ おめぇに会いてぇ
一目でもええ、夢ん中でもええ、母ちゃんに会いに来てくんろ
せがれや せがれや せがれやぁ…」
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