1.9月には帰らない
作詞:Yumi Matsutoya
作曲:Yumi Matsutoya
9月には 帰らない
ただひとり 残っても
明日あたり 燈台へ
波しぶき見に行こう
未来が霧に 閉ざされていた頃は
この潮騒が 重すぎて 泣いた
今はもう負けないわ
9月には帰らない
無口な人は 夏の日のはかなさを
うまく言えずに バスの窓おろす
今はもう負けないわ
9月には帰らない
9月には帰らない
2.ハルジョオン・ヒメジョオン
作詞:Yumi Matsutoya
作曲:Yumi Matsutoya
川向こうの町から 宵闇が来る
煙突も家並みも 切り絵になって
哀しいほど紅く夕陽は熟れてゆくの
私だけが変わり みんなそのまま
ヒメジョオンに埋もれてくちづけをした
土手と空のあいだを風が渡った
哀しいほど紅く川面はゆれていたの
越していった日から顔も忘れた
哀しいほど紅く 心は燃えているの
思い出すそばから 葬るくせに
哀しいほど紅く夕陽は熟れてゆくの
私だけが変わり みんなそのまま
3.私なしでも
作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実
胸の上で 手をくんではだめよ
きっと悪い夢に うなされるから
窓を開けて 寒くしてはだめよ
毛布のような私 もういないから
やがてあなたが寝息をたてるころ
朝陽に縁どられ 始発にのる
二度と来ない町が流れてゆく
枕木ひとつづつ自由になるわ
自分でなく この私のために
近道を選んで しまったと言う
いつかあなたの 気弱な言い訳が
その胸に私を 帰れなくした
やがてあなたが寝息をたてるころ
朝陽に縁どられ 始発にのる
二度と来ない町が流れてゆく
枕木ひとつづつ自由になるわ
4.地中海の感傷
作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実
Barcelona, Barcelona
沖は白く あたたかな霧が降ってた
週末へ急ぐように
島をめぐる夜の船 うるんで消えた
Barcelona... そのあとの住所も知らず
たどった坂の街は 輝く蜘蛛の巣
あの時胸焦がした 絵葉書それは
ただ一度送られた 心のしるし
束の間の表情と しぐさのかけら
まぶたの闇の中を ひとときよぎる
失くしても失くしても
たたみ込んで波音が面影運ぶ
Barcelona, Barcelona
塔の上も やわらかな霧が降ってた
気の長い人々が ふっとやりきれず
いつかしら はぐれてた遠く 歩いて歩いて
5.紅雀
作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実
外海をかけてゆく潮のように
この胸は急いでいる
暁にシュプールを描きながら
雲の群れわき上がる場所へ
誰か不幸にしても
熱い気持ちは止められない
臆病が 籠の中閉じこめてた
もう一度 飛ばせてほしいの
誰に禁じられても
腕にとびこみ Bravo!と叫ぶ
ぬけがらの体だけ砂に残し
この胸は波間へ旅立つ
暁にシュプールを 描くように
もう一度 飛ばせてほしいの 高く 自由に
6.罪と罰
作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実
So sad, so sad, so sad
だって 人の心覗けない
今あなたを塗りつぶしてるか…
激しく愛したあと午後の引き潮とともに
白く うつろになる
チックタクと時は過ぎてゆく
そんなふうに髪を撫でないで
肩にかかる指先 そのつめの形にさえ
私 死にたくなる
いつもうれしい分だけ あとから哀しみが来る
どんなに 燃えて求めても
決してひとつにはなれないの
もっとつらく かなしくさせてね
私だけにくれる痛みなら…
静かなささやきすら 砂漠の竜巻になり
遥か連れ去られる
いつもうれしい分だけ あとから哀しみが来る
どんなに 燃えて求めても
決してひとつにはなれないの
ちょっとさめたふりをするくせは
傷つくのを うまくさけるため
悪い手管の罪は 情熱奪われる罰
だけど 今度はいや
今度はいや
So sad, so sad, So sad... ...
7.出さない手紙
作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実
つかまっちゃった浮世の風に
あなたのそばを離れたとたんわかった
あつかいづらい こんな女に
行くあては 当分ないでしょう
前のくらしは おだやかすぎて
自分がダメになってゆくような気がした
表に出れば 綺麗になれて
何かしら 待ってそうだった
本気で困ったときには
電話してしまうけど
あなたには寄り道をもう
させること できない
映画を見たり 何かのときに
スーッと涙が 流れたりしておかしい
弱気がペンを 走らせるのね
これはただ 出さない手紙
8.白い朝まで
作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実
都会の公園、夜の噴水
若い日 傘の中で雨を見ていた
何を求めていたのでしょう
今は遠くてわからない
ここは昔の谷間のようで
淋しさに似合う
こんなに脆くなったのを
今は誰にも話せない
小雨の朝は闇をうすめて
忍びやかに来る白い影
9.LAUNDRY-GATEの想い出
作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実
ふた駅ゆられても まだ続いてる
錆びた金網 線路に沿って
昔あのむこうを あの子と二人
風に吹かれて 歩いたものさ
男の扱い ピツァの作り方
得意気な声が 目をつぶれば聞こえる
“ジミヘン”のレコードも返せないまま
手紙を書くがらでもないし
見送る約束 寝すごした日には
古い滑走路に 夏草だけゆれてた
16の誕生日 私にくれた
苦い口紅 つけて来たのに
あの子が故郷へ飛んでいってから
なぜか寂れてしまったランドリー・ゲイト
10.残されたもの
作詞:松任谷由実
作曲:松任谷由実
荒野かけぬける 風の音を聞いて
冬の訪れをじっと感じていた
とばりはゆっくりと
山のすそまで降りて
またひとりだけの時が始まった
またひとりだけの時が始まった
明日目覚めたら 枝の病葉さえ
きっと銀箔の空を旅してゆく
最後に残された
何かが解かれるように
もう捨てるものは何もなくなる
またひとりだけの時が始まった
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