1.誰ぞこの子に愛の手を
作詞:岡林信康
作曲:岡林信康
母の顔も知らないうちに
哀れこの子はサーカス小屋に
辛い玉乗り綱渡り
鬼の師匠が 鞭の雨
夜毎 褥は 涙の海よ
これが泣かずに おられようか
誰ぞこの子に愛の手を
誰ぞこの子に愛の手を
とおとおある晩風呂敷一つ
サーカス小屋をば飛びいだし
有閑マダムにひろわれて
いつしか若いツバメの身
これでいいやら悪いやら
新聞読んでも かいてない
誰ぞこの子に愛の手を
誰ぞこの子に愛の手を
マダムの可愛い着せかえ人形
何をやっても「まあ、素敵!」
ところが 夜毎夢の中
鬼の師匠が地獄の責め苦
おかげでちやほやせぬ人あれば
鬼の師匠に見え 憎らしい
誰ぞこの子に愛の手を
誰ぞこの子に愛の手を
そんなわけでこの子のやる事は
右から左の両極端
あるときゃいじけた自閉症
舞台かわれば 甘えて好きかって
黒か白だけ グレイは見えず
被害妄想のパラノイヤ
誰ぞこの子に愛の手を
誰ぞこの子に愛の手を
2.流れ者
作詞:岡林信康
作曲:岡林信康
飯場飯場と 渡ってく
おれは一生 流れ者
流れ流れて どこまでも
明日を知れない この俺さ
工事終った その日から
俺も居ないさ この街に
飯場飯場と 渡ってく
おれは一生 流れ者
流れ者でも ふれあう心
すねた俺にも 恋はある
どうせ出て行く この町なのに
ほれたおれが やぼなのさ
たまらないほど せつなくて
泣いてこの身を くやんでも
飯場飯場と渡ってく
おれは一生 流れ者
暗い飯場の かたすみで
一人のみほす 茶わん酒
せんべい布団に くるまって
おれが見る夢は 何の夢
どこか似ている この町が
思い出させる 故郷の
飯場飯場と渡ってく
おれは一生 流れ者
3.自由への長い旅
作詞:岡林信康
作曲:岡林信康
いつのまにかわたしが
わたしでないような
枯葉が風に舞うように
小舟がただようように
わたしがもう一度
わたしになるために
育ててくれた世界に
別れを告げて旅立つ
信じたいために疑いつづける
自由への長い旅をひとり
自由への長い旅を今日も
この道がどこを
通るのか知らない
知っているのはたどりつく
ところがあることだけ
そこがどこになるのか
そこで何があるのか
わからないままひとりで
別れを告げて旅立つ
信じたいために疑いつづける
自由への長い旅をひとり
自由への長い旅を今日も
4.俺らいちぬけた
作詞:岡林信康
作曲:岡林信康
田舎のいやらしさは 蜘蛛の巣のようで
おせっかいのベタベタ 息がつまりそう
だから俺は 町に出たんだ
義理と人情の蟻地獄
俺らいちぬけた
ところが町の味気なさ 砂漠のようで
コンクリートのかけらを 食っているみたい
死にたくないから 町を出るんだ
ニヒリズムの無人島
こいつもいちぬけた
考えてみりゃ俺らも 生きもののひとつ
お天とう様がなかったら 空気も吸えなんだ
花や鳥の中に 俺を見たんだ
命あるものの 流れに沿って
今夜町を出よう
命あるものの 流れに沿って
今夜町を出よう
5.26ばんめの秋
作詞:岡林信康
作曲:岡林信康
山は紅く紅く色づいて
すすきが風に風にゆれている
朝はとても冷い もうすぐ冬が来るね
朝はとても冷い もうすぐ冬が来るね
病院のベッドに おばあちゃんを
枯れたような身体をゆっくり起こして
うれしそうに笑った
ぼくを見て笑った
ぼくは何も言えずに俯いてだまった
姉には二人目の二人目の子供
上のさつきちゃんは
もう姉ちゃんになるの
三年前にはいなかったのにそしてぼくは
この夏26
この頃不思議な気分に なることがある
とても愉快な そのくせ淋しいような
ねえ どうしてぼくは ここにいるの
ねえ どうしてぼくは 君とここにいるの
山は紅く紅く色づいて
すすきが風に風にゆれている
朝はとても冷い もうすぐ冬が来るね
朝はとても冷い もうすぐ冬が来るね
6.家は出たけれど
作詞:岡林信康
作曲:岡林信康
俺らは奴らの おもちゃじゃないと
おまえは親に さからって
なんども家を 飛び出しては
そのたび おふくろを泣かせてた
ひどい息子だと いわれていたけど
俺は思ったぜ カッコイイ!
だんだんどたまの さえてきたお前は
学校もたえられなく なってきて
ある日とうとう おふくろにむかって
学校をやめると 言い出した
おふくろは まるで野つぼに
落ちたような顔をして
あの時言ったぜ ナヌー!
いい線いってた お前だったが
メッキがはげる 時がきた
おふくろに好きな 男ができて
家を出てくと 言った時
こんどは お前が野つぼに
落ちたような 顔をして
言ってしまった お母はーん!
家を飛び出て 一緒になった
彼女にこのごろ ふられたそうな
お前が つくろうとしていたものは
あんなに きらってた家なのさ
ただのつまらない 男だったと
彼女は お前をすててった
いったい これから
どないしはるつもりでござります!
家は出たけれど 家は出たけれど
家は 出たけれど
トホホホホ……
7.ゆきどまりのどっちらけ
作詞:岡林信康
作曲:岡林信康
これは 終りなのか
これは 始まりなのか
おれは 死んでるのか
おれは 生きてるのか
やることがない
とてもたいくつな どっちらけ
何度もさよならをして
何度もこんにちはをした
だんだん追いつめられて
とうとう行くところがない
行きどまりの
何もない どっちらけ
今は夜なのか
今は朝なのか
まだ明るくはないが
もう充分暗い
そろそろ何かが
見えてきてもいいはず
そろそろ何かが
見えてきてもいいはず
8.申し訳ないが気分がいい
作詞:岡林信康
作曲:岡林信康
ぬけるような空が痛い
風がヒゲに遊んでゆく
申し訳ないが気分がいい
全ては此処につきるはず
どうしてこんなに 当り前のことに
今まで気づかなかったのか
緑が瞳をえぐり出し
谷川と鳥たちのうた
申し訳ないが気分がいい
全ては此処につきるはず
どうしてこんなに 当り前のことに
今まで 気づかなかったのか
土と緑と動くものと
水と光とそして私
今はじめて彼らを知り
今はじめて私を知る
今この時 私は私を
人と 人と名付けるのだ
9.みのり
作詞:岡林信康
作曲:岡林信康
みのり ちいさな瞳で
お空のお星様 お月様を
僕もおまえを胸に抱き
一緒に見上げてる 夜の空
みのりちゃんの おばあちゃんが
遠いところへ 行ったのは
ちょうど去年の 今頃
ちょうど去年の 今頃だよ
みのり あの星も月も
僕らをじっと見ているようだね
おうちの中では かあさんと
大介くんがもう ねんねだよ
みのりちゃんの おばあちゃんは
大介くんには 出会えずに
可愛い寝顔も 見えないまま
たった一人で 行ったんだよ
みのり 僕が出会えぬ人と
僕が見ることの できないものを
いつかおまえは 見るだろう
いつかおまえは 出会うだろう
あの星は お月様は
いろんなものを 見たろうね
みのり ぼくのお母さんが
遠くへ行ってから 一年が……
10.五年ぶり
作詞:岡林信康
作曲:岡林信康
別れた女(ひと)と 五年ぶり
ひょんなところで 逢いました
あんなふうに 別れたが
こんなふうに 飲んでる ン……
あんたの彼氏の 話から
俺のかみさんと 子供まで
あんなふうに 別れたが
こんなふうに 話して ン……
時が洗い流すなんて
そんなふうに言いたくないけど
まんざら嘘でも……
おばあちゃんの子の 甘えんぼ
自分の口から いえるんだ
あんたにゃ ネタは割れてるし
なんだか嬉しく なってくる ン……
少し大人に なったのね
サンキューとっても 嬉しいよ
あんたは子供の 儘がいい
そいつが一番 いかしてる ン……
時が洗い流すなんて
そんなふうに言いたくないけど
まんざら嘘でも……
11.花火
作詞:岡林信康
作曲:岡林信康
大介くん 生まれて初めて花火を見る
声をあげて はしゃいでる
みのりちゃん きみは花火を手に持って
自分でやれると 得意顔
キラキラ燃えて 光る花火
そしてちいさな ちいさな瞳
ふたりともまだ
火をつけてない 花火のようなものだね
大介くん きみはどんな仕掛けの花火
どんな色で 燃えるだろう
みのりちゃん きみはチョッピリ派手な花火
ドンドン パチパチ はじけそう
キラキラ燃えて 光る花火
そしてちいさな ちいさな瞳
ぼくも花火さ 火をともされた
いま燃えている花火
大介くん うまく自分の色を出して
ぼくは燃えて いるだろうか
みのりちゃん ぼくはどこまで燃えたのか
チョッピリ怖いけど 知りたいさ
キラキラ燃えて 光る花火
そしてちいさな ちいさな瞳
ふたりともまだ
火をつけてない 花火のようなものだね
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