風街ろまん

はっぴいえんど 風街ろまん歌詞
1.抱きしめたい

作詞:松本隆
作曲:大瀧詠一

淡い光が吹きこむ窓を
遠い田舎が飛んでゆきます
ぼくは烟草をくわえ
一服すると
きみのことを考えるんです

黝い煙を吐き出しながら
白い曠地を切り裂いて
冬の機関車は
走ります
きみの街はもうすぐなんです

ゴオ ゴオ ゴオ と
雪の銀河をぼくは
まっしぐらなんです

飴いろの雲に着いたら
浮かぶ驛の沈むホームに
とても素速く
飛び降りるので
きみを燃やしてしまうかもしれません


2.空いろのくれよん

作詞:松本隆
作曲:大瀧詠一

空いろのクレヨンできみを描いたんです
そっぽを向いた真昼の遊園地で
花模様のドレスがとても良く似合うんで
ぼくのポケットにはいりきらないんです
ぼくは
きっと風邪をひいてるんです

きみの眸のなかで雲が急に雪崩れると
おもて通りはブランコのように揺れるんです
画用紙のなかのきみはとても綺麗すぎるんで
透き徹った冬に帰ってしまうんです
ぼくは
きっと風邪をひいてるんです


3.風をあつめて

作詞:松本隆
作曲:細野晴臣

街のはずれの
背のびした路次を 散歩してたら
汚点だらけの 靄ごしに
起きぬけの路面電車が
海を渡るのが 見えたんです
それで ぼくも
風をあつめて 風をあつめて
蒼空を翔けたいんです
蒼空を

とても素敵な
昧爽どきを 通り抜けてたら
伽藍とした 防波堤ごしに
緋色の帆を掲げた都市が
碇泊しているのが 見えたんです
それで ぼくも
風をあつめて 風をあつめて
蒼空を翔けたいんです
蒼空を

人気のない
朝の珈琲屋で 暇をつぶしてたら
ひび割れた 玻璃ごしに
摩天楼の衣擦れが
舗道をひたすのを見たんです
それで ぼくも
風をあつめて 風をあつめて
蒼空を翔けたいんです
蒼空を


4.暗闇坂むささび変化

作詞:松本隆
作曲:細野晴臣

ところは東京麻布十番
折しも昼下り
暗闇坂は蝉時雨
黒マントにギラギラ光る目で
真昼間っから妖怪変化
ももんがーっ
ももんがーっ
おー
ももんがーっ

蝶々はひらひらひーら
蝙蝠ぱーたぱた
怪しげな雲流れる
黒ソフトに耳まで裂けたロで
「ごぶさたでした」と草疲びれた声
ももんがーっ
ももんがーっ
おー
ももんがーっ

思い出してみればお婆ぁちやんの
昔噺でお目にかかった以来
「苦労ばなしのひとつやふたつ聞かせろ」と
手を取り行くのも絵空事
ももんがーっ
ももんがーっ
おー
ももんがーっ


5.はいからはくち

作詞:松本隆
作曲:大瀧詠一

はいから
はいから
はいから
はいから
ぼくははいから血塗れの空を
玩ぶきみと こかこおらを飲んでいる
きみははいから裳裾をからげ
賑やかな都市を飾る 女郎花
ぼくは
ぼくははいからはくち

はいから
はいから
はいから
はいから
ぼくははいから血を吐きながら
きみののおにただ夕まぐれ
きみははいから唐紅の
蜜柑色したひっぴーみたい
ぼくは
ぼくははいからはくち
はいから
はいから
はいから




6.はいから・びゅーちふる

作詞:多羅尾伴内
作曲:多羅尾伴内

はいから・びゆーてぃふる
はいから・びゆーてぃふる
はいから・びゆーちふる


7.夏なんです

作詞:松本隆
作曲:細野晴臣

田舎の白い畦道で
埃っぽい風が立ち止る
地べたにペタンとしゃがみこみ
奴らがビー玉はじいてる
ギンギンギラギラの
太陽なんです
ギンギンギラギラの
夏なんです

鎮守の森は ふかみどり
舞い降りてきた 静けさが
古い茶屋の 店先に
誰かさんとぶらさがる
ホーシーツクツクの
蝉の声です
ホーシーツクツクの
夏なんです

空模様の縫い目を辿って
石畳を駆け抜けると
夏は通り雨と一緒に
連れ立って行ってしまうのです
モンモンモコモコの
入道雲です
モンモンモコモコの
夏なんです

日傘くるくる ぼくはたいくつ
日傘くるくる ぼくはたいくつ


8.花いちもんめ

作詞:松本隆
作曲:鈴木茂

ぼくらが
電車通りを駆け抜けると
巻きおこる
たつまきで街はぐらぐら
おしゃれな風は花びらひらひら
陽炎の街
まるで花ばたけ

紙芝居屋が
店をたたんだあとの
狭い
路次裏はヒーローでいっぱい
土埃の風の子たちにゃあ
七つの海も
まるで箱庭さ

右手の烟突は
黄色い煙を吐き
左手の烟突は
紅い煙を吐く
みんな妙に怒りっぽいみたい
みんな妙に怒りっぽいみたい


9.あしたてんきになあれ

作詞:松本隆
作曲:細野晴臣

ときどき戦闘機が墜ちてくる街に
今日は朝から雨がしとしと
黝んだ水溜りを飛んだ少女は
とっておきの微笑
ぽつん

旧いふぃるむのようなざぁざぁ雨に
戦車のような 黒雲びゅうびゅう
人攫いの夢に怯えた少女は
いっちょうらの涙を
ぽつり
あしたてんきになあれ
あしたてんきになあれ

さっきまで駆逐艦の浮んでた通りに
のっぴきならぬ虹がかかった
その虹で千羽鶴折った少女は
ふけもしない口笛
ひゅうひゅう
あしたてんきになあれ
あしたてんきになあれ


10.颱風

作詞:大瀧詠一
作曲:大瀧詠一

四辺は俄かにかき曇り
窓の簾を洌たい風が
ぐらぐらゆさぶる
正午のてれびじょんの天気予報が
台風第二十三号の
接近を知らせる
空を鼠色の雲が
迅く迅く迅く迅くはしり 風は
どんどんどんどんふいてくる
台風 台風
どどどどどっどー
どどどどどっどーみんな吹きとばす

街はしーんと闇くなり
樋からあふれ落ちた水は道の真ん中を
我物顔ですべる
地面にぴしぴしとびはねる
雨は天の投げ飛礫
地上の洗濯に
風と雨粒は我武者羅にそこら一面
ぐるぐるぐるぐる踊りまわる
台風 台風
どどどどどっどー
どどどどどっどーみんな吹きとばせ


11.春らんまん

作詞:松本隆
作曲:大瀧詠一

向ふを行くのは お春じゃなゐか
薄情な眼つきで 知らぬ顔
沈丁花を匂はせて
おや、まあ
ひとあめくるね

はるさめもやふのお春じゃなゐか
紺のぼかしの 蛇の目傘に
花梔子の雨が けぶる
おや、まあ
これからあひびきかゐ

婀娜な黒髪 お春じゃなゐか
淡くれなゐに 頬紅そめりゃあ
巴旦杏もいろなしさ
おや、まあ
春らんまんだね

暖房装置の冬が往くと
冷房装置の夏が来た
ほんに春は来やしなゐ
おや、まあ
また待ちぼうけかゐ


12.愛餓を

作詞:松本隆
作曲:大瀧詠一

あいうえを かきくけこ
さしすせそそそそ たちつててとと
なにぬねの はひふへほ
まみむめもももも やいゆえよ
らりるれろろろろ わゐうゑを ン